■特異点(その17)
【3】エピサイクロイド・ハイポサイクロイドの特異点
回転円(半径r)が固定円(半径R)に接して滑ることなく転がっていくとき,回転円の周上の点の軌跡を考えます.回転円が固定円に外接するとき,その軌跡をエピサイクロイド,内接するとき,ハイポサイクロイドと呼びます.たとえば,固定円と回転円の半径が等しい場合,エピサイクロイドは心臓型曲線(カーディオイド)を描きます.また,星形曲線アステロイドは固定円の半径が回転円の半径の4倍になっているハイポサイクロイドです.
エピサイクロイド(カージオイド,ネフロイドなど),ハイポサイクロド(デルトイド,アステロイドなど)は,サイクロイドとは異なり代数曲線です.r=1として,直交座標系におけるこの曲線の方程式を求めてみましょう.
エピサイクロイドでは,
カージオイド(尖点数1):
f(x,y)=(x^2+y^2)^2−6(x^2+y^2)+8x−3=0
ネフロイド(尖点数2):
f(x,y)=(x^2+y^2)^3−12(x^2+y^2)^2+48x^2−60y^2−64=0
ハイポサイクロイドは,n=2のとき,
f(x,y)=y −2≦x≦2
すなわち,固定円の直径と一致します.直径は2つの尖点をもっていて,その両端は退化した2つの尖点とみなすことができます.
デルトイド(尖点数3):
f(x,y)=(x^2+y^2)^2+18(x^2+y^2)−8x(x^2−3y^2)−27=0
アステロイド(尖点数4):
f(x,y)=(x^2+y^2)^3−48(x^2+y^2)^2+432x^2y^2+768(x^2+y^2)−4096=0
いずれも簡単な形にはなりませんが,4つの尖点(特異点)をもつ曲線:アステロイドでは
x=3rcosθ+rcos3θ
y=3rsinθ−rsin3θ
また,3倍角の公式
cos3θ=4cos^3θ−3cosθ
sin3θ=3sinθ−4sin^3θ
を用いると
x=4rcos^3θ
y=4rsin^3θ
より
x^(2/3)+y^(2/3)=(4r)^(2/3)=a^(2/3)
を得ることができます.r=1では,
x^(2/3)+y^(2/3)=4^(2/3)
と表すことができるますが,このほうが一般的でしょう.
ここで,
cosθ=(1−t^2)/(1+t^2)
sinθ=2t/(1+t^2)
と表せば,エピサイクロイド,ハイポサイクロドは,サイクロイド:
x=r(θ−sinθ)
y=r(1−cosθ)
とは異なり,代数曲線であることがわかます.
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エピサイクロイド(カージオイド,ネフロイドなど),ハイポサイクロド(デルトイド,アステロイドなど)には,直線族の包絡線であるという共通の性質が知られています.
たとえば,アステロイドは長さ4rの棒の両端をx軸,y軸にのせながら動かしたときの包絡線となっています.「アステロイド:x^(2/3)+y^(2/3)=a^(2/3)において曲線状の任意の点における接線がx軸,y軸と交わる点をそれぞれA,BとすればAB=aであることを証明せよ.」は高校の教科書にも取り上げられていて,ご存知の方も多いでしょう.
すなわち,一定の長さaの線分の両端が直交軸上を動くとき,その線分の包絡線の方程式がアステロイド:
x^(2/3)+y^(2/3)=a^(2/3)
なのです.一方,その逆問題「曲線上の任意の点における接線のx軸,y軸とで切り取られる部分の長さが一定であるような曲線を求めよ(クレローの微分方程式)」を取り上げたものは少ないようです.この微分方程式も簡単に解けて,アステロイドという解曲線が得られます.
デルトイドは3つの尖点をもつ図形ですが,「デルトイドの接線が曲線に挟まれる部分の長さは一定である.」という性質があります.これは,デルトイドでは長さ4rの棒をデルトイドに接しながら1回転することができるというのと同一です.→(掛谷の問題)
また,ネフロイドは平行光線が円の内側で反射されるときの包絡線,カージオイドは光が周上の1点から発して円周で反射されたときにできる包絡線であることがわかっています.光線の半円による反射光線の包絡線が,これらのエピサイクロイドなのです.
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