■素数と無限級数(その65)
【1】素数定理
素数の分布は不規則かつ複雑で未知の部分が多いのですが,18世紀から19世紀にまたがって活躍したガウスは,「素数はどのような規則で現れるか」ということを考え,素数定理を予想しました(1792年:ガウスは当時15才であった).
素数定理とは,
π(x)〜x/logx (x→∞)
というものです.ここで,π(x)は任意の整数xを越えない素数の個数を表すものとします.素数定理は,xを超えない素数の個数を与える近似的な公式ですが,”〜”記号は漸近的に等しい,すなわちxが十分大きいとき両者の比が1に近づくという意味であって,両者の差がなくなるという意味ではありません.
いいかえれば,この近似式の絶対誤差はxの増大とともに増大するが,相対誤差は減少する,つまり,左辺と右辺の比はxを∞にすると極限が存在して0でも無限大でもなく,1に収束する,
π(x)/(x/logx)〜1 (x→∞)
ということです.xに近い2つの連続した素数間の平均距離はおよそlogxだといってもよいでしょう.
1850年に,ロシアの数学者チェビシェフは任意の数nと2nの間には少なくとも一つの素数pが存在する(n<p≦2n),同じことですが素数pの次の素数は2pより小さい(pk+1<2pk)という定理を発見しました.
この証明の発見は彼が実に18才のときだったそうですから,「栴檀は双葉よりの芳し」の諺のごとくです.チェビシェフの定理によって,素数の分布には何らかの秩序が存在していることになります.さらに,チェビシェフは1852年に,十分大きなxについてπ(x)/(x/logx)が
0.92129と1.10555
の間にあるという結果を得ています.この結果を得るためにチェビシェフは,オイラーによって1740年に考案されたゼータ関数(のちにリーマンがこの名前を付けた)を利用しました.
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