■こんなところにもチェビシェフ多項式が現れる(その36)
与えられた関数f(x)に対して与えられた区間[−h,h]上で,n−1次多項式:g(x)=p0+p1x+p2x^2+・・・+pn-1x^n-1とのズレ
h(x)=|f(x)−g(x)|
の最大値を最小にするパラメータの値を求める最良一様近似(ミニマックス近似)の問題を考える.
有理分数式g(x)=p(x)/q(x)を用いて最良近似する問題も含め,このような一様計量はチェビシェフ計量と呼ばれていて,最小2乗法の計量とは異なる.
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【1】最良近似
特殊な場合として,最高次数の係数が1のn次多項式
f(x)=x^n+p1x^n-1+・・・+pn
で,ゼロからの偏差が最小の多項式を求める問題を考えよう.もし解が存在するならば,L=max|f(x)|としてf(x)の値の絶対値がLに等しく,n回符号が交代する点が存在することが必要である.
そのためには,g(x)=(1/n)f’(x)(すなわち最高次数の係数が1のn−1次多項式)として恒等式
|f(x)|^2−L^2=(x^2−h^2)|g(x)|^2
が成り立たなければならない.
f(x)−(x^2−h^2)^1/2g(x)=L^2/(x^2−h^2)^1/2f(x){f(x)+(x^2−h^2)^1/2g(x)}
と書き換えて,1/(x^2−h^2)^1/2の連分数展開すると
f(x)={(x+(x^2−h^2)^1/2)^n+(x−(x^2−h^2)^1/2)^n}/2^n
ここで,x=hcosθとおくと
f(x)=h^n/2^n-1・cosnθ=h^nTn(x/h)
Tn(x)=1/2^n-1・cos(narccosx)
という形をとることがわかる.
[注]多少修正した記号を使う場合もあるので,注意!
L=h^n/2^n-1
零点は−h=x1=hcos(nπ/n),x2=hcos((n−1)π/n),・・・,xn+1=hで与えられる.
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【2】チェビシェフ多項式
ド・モアブルの定理:
(cosθ+isinθ)^n=cosnθ+isinnθ
の左辺を2項展開して,両辺の実部,虚部を比較すると
cosnθ=(cosθ)^n−nC2(cosθ)^n-2(sinθ)^2+・・・=(cosθのn次多項式)=Tn(cosθ)
sinnθ=nC1(cosθ)^n-1sinθ−nC3(cosθ)^n-3(sinθ)^3+・・・=sinθ×(cosθのn−1次多項式)=sinθ×Un(cosθ)
を得る.
また,
cosnθ=cosθcos(n−1)−sinθsin(n−1)θ
sinnθ=sinθcos(n−1)+cosθsin(n−1)θ
より,漸化式
Tn(cosθ)=cosθTn-1(cosθ)−(sinθ)^2Un-1(cosθ)
Un(cosθ)=Tn-1(cosθ)+cosθUn-1(cosθ)
Tn(cosθ)=2cosθTn-1(cosθ)−Tn-2(cosθ)
Un(cosθ)=2cosθUn-1(cosθ)−Un-2(cosθ)
ここで,cosθ=xの多項式で表すと,チェビシュフ多項式は
Tn(x)=2xTn-1(x)−Tn-2(x)
Un(x)=2xUn-1(x)−Un-2(x)
が成り立つ.
第1種チェビシュフ多項式
T0(x)=1,T1(x)=x,T2(x)=2x^2−1,T3(x)=4x^3−3x,T4(x)=8x^4−8x^2+1,・・・
また,Tn(x)=0の根はcos(kπ/2n),k=1,3,5,・・・,2n−1と表される.
sinの場合には番号をひとつずらせて,sin(n+1)θ/sinθを考えると,第2種チェビシュフ多項式
U0(x)=1,U1(x)=2x,U2(x)=4x^2−1,U3(x)=8x^3−4x,U4(x)=16x^4−12x^2+1,・・・
また,Un(x)=0の根はcos(kπ/(n+1)),k=1,2,3,・・・,nと表される.
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【3】チェビシェフ多項式の性質
[1]最良近似
f(x)=x^n+p1x^n-1+・・・+pn
L=max|f(x)|
とおく.そのとき,区間[−1,1]上でLを最小にするのは
f(x)=Tn(x)/2^n-1
ただひとつで,L=1/2^n-1が成立する.
[2]漸化式
Tn(x)=2xTn-1(x)−Tn-2(x)
Un(x)=2xUn-1(x)−Un-2(x)
[3]直交性
∫(-1,1)Tm(x)Tn(x)/(1−x^2)^1/2dx
=0 (m≠n)
=π (m=n=0)
=π/2 (m=n≠0)
[4]母関数
T0(x)+2ΣTn(x)t^n=(−t^2+1)/(t^2−2xt+1)
[5]合成
Tm(Tn(x))=Tmn(x)
[6]多項式近似定理(ワイエルシュトラス)
閉区間[a,b]で連続な関数をf(x)とする.このとき
|f(x)−g(x)|<ε
を満たす多項式g(x)が常に存在し,それはただひとつである.
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