■整数環X(その21)
フルビッツの整数,
ω=(1+i+j+k)/2
は,
ω^2=(−1+i+j+k)/2
ω^3=−1
ω^4=−(1+i+j+k)/2
ω^5=(1−i−j−k)/2
ω^6=1
より1の原始6乗根であり,ωは4次元空間内の60°回転に対応していると考えることができる.これを別の角度からみることにしよう.
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【1】3次の回転行列(その1)
各軸周りの回転角θをオイラー角と呼ぶ.回転行列は
[], 0, 0 ]
R1 =[0, cosθ,sinθ]
[0,−sinθ,cosθ]
[cosθ,0,−sinθ]
R2 =[ 0, 1, 0 ]
[sinθ,0, cosθ]
[ cosθ,sinθ,0]
R3 =[−sinθ,cosθ,0]
[ 0, 0, 1]
として,A=R1R2R3のようなものを考える.
空間を回転させる行列で直交変換となっているパラメータ数が3つの「回転」かつ「直交」行列として
(1)オイラー角に基づくもの
(2)ロール・ピッチ・ヨーに基づくもの
がある.(1)はz軸まわりの回転α→新しいy軸まわりの回転β→新しいz軸まわりの回転γ,(2)はz軸まわりの回転φ→新しいy軸まわりの回転θ→新しいx軸まわりの回転ψの3段階によって表すもので,両者に本質的な違いはない.いずれにせよ,軸周りの回転の順番を変えると結果が違ってしまう.
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【2】3次の回転行列(その2)
x,y,z軸の周りの回転では使いにくい.そこで,単位ベクトル
n=(α,β,γ)
を回転軸とし,その周りに正の回転方向にθだけ回転する回転行列はα,β,γは方向余弦で,α^2+β^2+γ^2=1を満たすものとして
R(1,1)=α^2(1-cosθ)+cosθ
R(2,2)=β^2(1-cosθ)+cosθ
R(3,3)=γ^2(1-cosθ)+cosθ
R(1,2)=αβ(1-cosθ)+γsinθ
R(2,1)=αβ(1-cosθ)-γsinθ
R(1,3)=αγ(1-cosθ)-βsinθ
R(3,1)=αγ(1-cosθ)+βsinθ
R(2,3)=βγ(1-cosθ)+αsinθ
R(3,2)=βγ(1-cosθ)-αsinθ
で表される.
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【3】単位四元数と3次元の回転
実部をw,虚部をvとし,
q1=w1+x1i+y1j+z1k=(w1,v1)
q2=w2+x2i+y2j+z2k=(w2,v2)
と表すことにすると,
q1+q2=(w1+w2,v1+v2)
q1・q2=(w1w2−(v1・v2),w1v2+w2v1+(v1×v2))
と表せる.
ここでもう一度,3次元空間内の任意の点を位置ベクトルpで表し,軸nの周りにθだけ回転したベクトルをRpとし,Rpをp,n,θを用いて表そう.
nに直交するベクトル:q=p−(p・n)n
nとpの外積:r=n×q=n×p
とすると
Rp =cosθq+sinθr+(n・p)n
=cosθp+(1−cosθ)(n・p)n+sinθ(n×p)
がわかる.
次に,単位四元数q=(w,v)=(cosη,sinηn)を用いた変換
Rp(h)=q・h・q~
を考える.q~=(w,−v)
pを四元数の虚部とみなすと,
Rp(p)=q・p・q~=(w,v)・(0,p)・(w,−v)
=(0,(w^2−|v|^2)p+2(p・v)v+2w(v×p))
=cos2ηp+(1−cos2η)(n・p)n+sin2η(n×p)
したがって,θ=2ηとおけば,軸n周りのθ回転は単位四元数
q=(cosθ/2,sinθ/2n)
で簡単に表せることがわかる.
四元数は群,環,体などの代数的構造の理論という分野の中で不可欠な役割を担ったのであるが,1843年,ハミルトンが発見して以来3次元運動の力学系を記述するために使われてきて,スペースシャトルの制御でも利用されている.また,電磁気学や相対性理論,三次元の非ユークリッド幾何学の法則を記述するのにも応用されているそうだ.
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