■色のない虹(その11)

1666年当時ニュートンはまだ24才の青年でした.この年,彼は<光の分散>という大発見,すなわち,太陽光線がガラスのプリズムを通ると屈折率の差によって赤から紫に至るたくさんの成分に分けられることを発見したのです.

 とくに目立った色だけあげて虹の7色:赤(red),橙(orange),黄(yellow),緑(green),青(blue),藍(indigo),紫(purple):といいますが,これらの色には相互にはっきりしたしきりがあるのではなく,連続的に変化する無数の異なった色からなっています.このようにして生じた美しい光の帯にニュートンはスペクトルという名称を与えました.

 実は,虹には7色あるというニュートンの主張は光学的判断に基づくもの(実験によって客観的に決定されたもの)ではなく,音階理論との間の連想から導かれたものなのです.ニュートン自らは音楽を実践するということはなかったようですが,音楽理論には熱心な興味をもっていたようで,スペクトルを7つの光帯にわけたのは,ドレミファソラシの7音階に対応するようにということであって,5つの主要な色にあとから藍色と橙色を加えてつじつまを合わせたのです.こうすれば,7つの音に7色の色,これは本当にうまく調和しているように見えます.その意味で,ニュートンは17世紀のピタゴラス・プラトン主義者といってもよく,世界は数学的なハーモニーに従っていると確信していたケプラー同様,ニュートンもこの世の調和の研究に生涯を捧げたのです.

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