■四色問題(その11)
20世紀のうちに解決された悪名高き難問に,四色問題
「任意の平面地図は高々4色で色分けできるか?」
がある.
ケンペの職業は弁護士であったが,非常に優秀なアマチュア数学者でもあった.1879年には四色定理の不完全な証明をしたことで最も有名である.彼の証明には欠陥があったものの,全体的な考え方は非常に聡明なものであったという.
5色で色分けできることはヒーウッドによって100年以上も前から知られていたが,四色問題が肯定的に解決されたのは1970年代後半のことで,アペルとハーケンはコンピュータを使ってこの証明を成し遂げた.四色問題の証明は場合分けの数が膨大で,コンピュータによる解析に依存せざるを得なかったのである.
3次元のn個の領域を塗り分けるにはn色必要な例を作ることができる.それに対して2次元では「どんな平面地図でも4色で塗り分けられる」ことが証明されたのだが,多くの数学者はこの証明においてコンピュータによる解析が本質的だと知ると落胆し,失望したと伝えられている.
その証明は1995年にロバートソンらによって改良されてかなり簡単になったとはいえ,いまだ手計算で証明を完成させた人はいない.証明の技術的な困難さは克服されず,完全に決着したとはいいがたいのである.ともあれ,四色問題がグラフ理論の発展に対する推進力となったことは確かである.
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【1】オイラーの公式とケンペの証明
正則とは限らない一般の多面体では
Σpi=p1+・・・+pf=2e,
Σqi=q1+・・・+qv=2e
となります.pi≧3,qi≧3ですから
2e≧3f,2e≧3v (等号は三角形分割の場合)
v−e+f=2,2e≧3f,2e≧3v
を組み合わせると,
2v+2f=2e+4≧3f+4 → f≦2v−4
2v+2f=2e+4≧3v+4 → v≦2f−4
また,別の組合せ方をすると,
3v+3f=3e+6≦2e+3f → 3f−e≧6
3v+3f=3e+6≧2e+3v → 3v−e≧6
も得られます.
さらに,オイラーの多面体定理で示される制限からいえることとして,
F=f3+f4+f5+・・・
2E=3f3+4f4+5f5+・・・
を
6F−2E≧12
に代入すると
3f3+2f4+f5−f7−2f8−3f9−・・・≧12
地図のように2つの辺に囲まれた領域まで許すことにすると,この数え上げ公式は
4f2+3f3+2f4+f5−f7−2f8−3f9−・・・=12
となります.いずれにせよ,係数が1ずつ小さくなり,それが0となるf6は式中に現れません.
このことから,f3,f4,f5の少なくとも1つは0でない→多面体には3角形か4角形面か5角形面が少なくとも1つなければならない,同様に,多面体の少なくとも1つの頂点は3次か4次か5次でなければならない→すべての頂点の次数が6以上となることは不可能であり,必ず次数が5以下の頂点をもつことが導き出されます.これもオイラーが知っていた結果であるということです.これらの結果は極めて重要で,四色定理の証明の中核をなしています.
n本の辺をもつfn枚の面とn本の辺が交わるvn個の頂点をもつ凸多面体について,各辺は2個の頂点をもつから,Σnvn=2E.また,各辺では2枚の面が交わるからΣnfn=2E.したがって,
Σnfn=Σnvn
が示されます.このとこから,頂点の次数をvnとし,
V=v3+v4+v5+・・・
2E=3v3+4v4+5v5+・・・
を
6V−2E≧12
に代入すると
4v2+3v3+2v4+v5−v7−2v8−3v9−・・・≧12
Σ(6−n)vn≧12 (等号は三角形分割の場合)
が成立します.
4v2+3v3+2v4+v5≧v7+2v8+3v9・・・+12≧12
ですから,v2≠0,v3≠0,v4≠0,v5≠0のいずれかが成立します.ケンペはv2≠0,v3≠0,v4≠0のいずれか成立しても4色で十分であることを証明したのですが,v5≠0の場合に間違っていたわけです.
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