■オイラー積分(その5)

【1】0に収束する2つの関数の比

 微積の学び初めに,x→0としたとき,

  sinx/x→1

に出会う.この結果は

  (sinx)’=cosx,(cosx)’=−sinx

を示すのに用いられる.

 0<x<π/2のとき,不等式

  0<sinx<x<tanx

が成り立つが,これはx→0としたとき,sinx/x→1の証明に用いられる有名な不等式である.

 ここでは別の方法で証明してみる.

  |sinx/x−1|≦|{(x−x^3/6+x^5/120)−x}/x|<|x^2/6|

ここで,|x^2/6|<εであるから,sinx/x→1.

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【2】0に収束する関数と有界振動する関数の積

 x→0としたとき,

  xsin(1/x)→0

なぜなら,

  |xsin(1/x)|≦|x|<ε

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【3】広義積分

 オイラー積分

  I=∫(0,π/2)log(cosx)dx=−π/2・log2

  I=∫(0,π/2)log(sinx)dx=−π/2・log2

  ∫(0,π)xlog(sinx)dx=−π^2/2・log2

(証)

2I=∫(0,π/2)log(cosx)dx+∫(0,π/2)log(sinx)dx

I=−π/4・log2+1/2∫(0,π/2)log(sin2x)dx

 =−π/4・log2+1/4∫(0,π)log(sint)dt

 =−π/4・log2+1/2I

=−π/2・log2

ゆえに,I=−π/2・log2

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【補】オイラー積分

 オイラーはいろいろな工夫をして,

  log(sinx)=-Σcos(2nx)/n-log2

であることをつきとめ,広義積分

  ∫(0,π/2)log(sinx)dx=-π/2log2

の値を求めています.

 また,これを代入して計算すれば

  1/1^3+1/3^3+1/5^3+・・・=π^2/4log2+2∫(0,π/2)xlog(sinx)dx

  ζ(3)=2π^2/7log2+16/7∫(0,π/2)xlog(sinx)dx

が得られます(1772年).

 このとき,

  1+1/3^3+1/5^3+1/7^3+・・・

の値が必要になりますが,この値はζ(3)=Σ1/n^3 から次のようにして求まります.

  1+1/2^3+1/3^3+1/4^3+・・・

 =(1+1/2^3+1/4^3+・・・)(1+1/3^3+1/5^3+・・・)

 =1/(1−1/8)・(1+1/3^3+1/5^3+・・・)

より,分母を奇数のベキ乗だけにすると一般式は

  {1-2^(ーs)}ζ(s)

 さらに,

  1/1^s−1/2^s+1/3^s−1/4^s+・・・

 =2(1/1^s+1/3^s+1/5^s+1/7^s+・・・)−(1/1^s+1/2^s+1/3^s+1/4^s+・・・)

より,+,−が交互に出現すると一般式

  {1-2^(1ーs)}ζ(s)

を得ることができます.

 オイラーによる

  ζ(3)=2π^2/7log2+16/7∫(0,π/2)xlog(sinx)dx

という結果(log2の有理式×π^2)から,ζ(2n+1)は有理数と円周率から四則演算によって得られる数ではないだろうと予想されていますが,証明されてはいません.また,log2を含むであろうと推測されています.

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