■素数もろもろ(その23)

【7】補遺

 

 本コラムでは2次体

  [Q(√d):Q]=2

についてだけ説明して,円分体のことは意識的に避けてきましたが,ここで円分体についても一言解説したいと思います.

 

 任意の素数pに対して,Z/pZはp個の元からなる有限体Fpで,Fp−{0}は原始根を生成元とする巡回群になります.Fpはp個の元からなる有限体で,Fp~は原始根を生成元とする巡回群になります.しかし,このような性質をもつ体はFp以外にもたくさんあり,それらは代数的整数論において重要になります.

 

 任意の体の乗法群の有限部分群は巡回群なのですが,例として,1のd乗根

  ζ=exp(2πi/d)

の全体は乗法に関して位数dの巡回群をなします.Q(ζ)を円のd分体といいます.また,1の原始d乗根はφ(d)個存在して,

  [Q(ζ):Q]=φ(d)

が成り立ちます.そして,1の原始d乗根を根とする多項式

  Φ(x)=Π(x−ζ^a)   (a,d)=1

を円分多項式を呼びます.

 

 次に,pをp≠2なる奇素数とし,1の原始p乗根として,

  ζ=exp(2πi/p)

をとります.1のp乗根全体は

  {1,ζ,ζ^2,・・・,ζ^(p-1)}

で1以外はみな原始p乗根となります.したがって,ζの最小多項式は

  Φ(x)=1+x+x^2+・・・+x^(p-1)=(x^p−1)/(x−1)

また,判別式は

  D=(−1)^{(p-1)/2}p^(p-2)

で与えられます.

 

 そして,

  p~=(−1)^{(p-1)/2}p

とおくと,

  Q(√p~)

はQ(ζ)の部分体になります.また,Q(ζ)の部分体

  Q(ζ+ζ^(-1))

において,ζ+ζ^(-1)は実数ですから,

  [Q(ζ):Q(ζ+ζ^(-1))]=2

の最大実部分体となっています.Q(ζ)はQ(√p~)とQ(ζ+ζ^(-1))を部分体としてもつというわけです.

 

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 Q(ζ)の2次の部分体Q(√p~)は

  (−1/p)=(−1)^{(p-1)/2}

より,

  p=1(mod4) → 実2次体Q(√p)

  p=3(mod4) → 虚2次体Q(√−p)

となります.

 

 2次体の類数決定では,ルジャンドル指標を用いましたが,円分体の2次の部分体(√p~)ではガウス和を用いることによって,類数の最終的なディリクレの公式に達することができます.

 

 位数nの巡回群の指標には1のn乗根が対応して,円分体についてのガウス和

  τ(χ)=Σχ(x)ζ^x

ヤコビ和

  J(χ,φ)=Σχ(x)φ(1-x)=τ(χ)τ(φ)/τ(χφ)

が定義されます.

 

 ガウス和はガンマ関数

  Γ(s)=∫(0,∞)x^(s-1)exp(-x)dx

ヤコビ和はベータ関数

  B(p,q)=∫(0,1)x^(p-1)(1−x)^(q-1)dx=Γ(p)Γ(q)/Γ(p+q)

と非常によく似ていています.

 

 円のp分体は拡大体としては巡回体に過ぎないのですが,データが多いだけ面白いことがたくさんあり,円分体の類数決定に関してもいろいろ面白い式があるようですが,それには

  小野孝「数論序説」裳華房

を参照されることをお勧めします.

 

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