■素数もろもろ(その16)
【4】類数の計算
Q(√d)はイデアルの同値類を有限個しかもちません.このイデアル類の数は類数と呼ばれ,h(d)で表されます.類数とはすべての数体に付随した不変量(自然数)なのですが,ミンコフスキーの定数Mを具体的に決定して,いくつかの場合に類数を決定することができます.たとえば,
[Q]次の4つの実2次体K=Q(2),Q(3),Q(5),Q(13)に対して,h=1を証明せよ.
[A] M=1/2√D
ですから,4≦D<16ならばh=1になります.ここで,
d=2,3(mod4) → D=4d
d=1(mod4) → D=d
ですから,d=2,3,5,13が合格です.
[Q]次の9つの虚2次体Q(√d)に対して,h=1を証明せよ.
−d=1,2,3,7,11,19,43,67,163
[A] M=2/π√-D=0.63663√-D
です.−d=1,2,3,7のときは,
D=4,8,3,7
で,M<2となり,h=1となります.
その他の場合はd=1(mod4)でD=dとなるのですが,M=2で−d=11,19のときは
−11=5,−19=5 (mod8)
より2は2次体でも素ですから,h=1となります.なお,それぞれ
χ(2)=(−1)^15=−1,χ(2)=(−1)^45=−1
と同値です.χは次節で述べるクロネッカーの指標を先取りしたものです.
M=4では
−43=5(mod8) (χ(2)=(−1)^231と同値)
(−43/3)=(−1/3)=−1
より,Q(√−43)は類数1をもちます.
同様の計算から,M=5のとき,類数1をもつ判別式はD=−67
χ(2)=−1,
χ(3)=(−67/3)=(−1/3)=−1,
χ(5)=(−67/5)=(−2/5)=(−1/5)(2/5)=−1
M=8のとき,類数1をもつ判別式はD=−163
χ(2)=−1,
χ(3)=(−163/3)=(−1/3)=−1,
χ(5)=(−163/5)=(−3/5)=(2/5)=−1
χ(7)=(−163/7)=(−2/7)=(−1/7)(2/7)=−1
以下,同様の論法で続けてもよいのですが,類数が1となる判別式は他には存在しません.h=1なる虚2次体Q(√d)はこれしかないというのが,有名な「スタークの定理」です.
ついでながら,h=2なる虚2次体Q(√d)は,
−d=5,6,10,13,15,22,35,37,51,58,91,115,123,187,235,267,403,427
の18個あります.
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