■素数もろもろ(その14)
【1】2次体と整数環(復習)
有理数体Qに,x^2−d=0の根√dを添加して得られる体Q(√d)を考えます.すると0,1以外の平方因数をもたない整数d,すなわち,
−1,±2,±3,±5,±6,±7,±10,・・・
によって,Q(√d)は体になり,2次体Q(√d)の元は一意的に
Q(√d)={a+b√d|a,bは有理数}
の形で表されます.とくに,d=−1のとき
Q(√−1)=Q(i)
はガウスの数体となります.
次に,Q(√d)の整数環を考えるわけですが,
d=2,3(mod4) → ω=√d
d=1(mod4) → ω=(1+√d)/2
で与えると,標準基底を{1,ω}とする代数的整数の集合
A(ω)={a+bω|a,bは整数}
は,加法および乗法に関して閉じて環になります.
この代数的整数の集合:A(ω)を2次体Q(√d)の整数環と呼びます.A(ω)は標準基底{1,ω}の2次元ベクトル空間となっているというわけです.
単純に{1,√d}を基底とする
Z(√d)={a+b√d|a,bは整数}
の形を考えてもよいのでしょうが,すでに分類のための第一歩は始まっていて,それぞれの場合のの最小多項式P(x)は
d=2,3(mod4) → P(x)=x^2−d
d=1(mod4) → P(x)=x^2+x+(1−d)/4
で求められます.説明するまでもなく,d=1(mod4)のとき,(1−d)/4は整数になります.
また,αが基底{1,ω}を用いてα=x+yωと表されるとき,αのノルムは
N(α)=x^2−y^2d (d=2,3 mod4)
N(α)=x^2+xy+(1−d)/4y^2 (d=1 mod4)
ですから,
P(x)=N(x+ω)
N(ω)=−d (d=2,3 mod4)
N(ω)=(1−d)/4 (d=1 mod4)
と定義できるわけです.
そして,判別式Dはトレースを用いて
D=|Tr(1),Tr(ω) |
|Tr(ω),Tr(ω^2)|
で定義され,
d=2,3(mod4) → D=4d
d=1(mod4) → D=d
となります.
代数体の判別式Dは基底の選び方には依存しない整数であり,代数体の大切な不変量の1つとなっているのですが,重根をもつ・もたないの判別ではなく,後述するように,素数の分解・分岐など素イデアルの分解法則と密接に関係しているのです.
なお,立方数でない有理数dに対して,Q(3√d)は3次体となります.その基底は
{1,3√d,3√d^2}
で表されます.
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