■素数もろもろ(その4)
[4]実2次体
説明するまでもないかもしれませんが,整数の比で表せない数を無理数(例:√2)と呼びます.いい換えれば,整数係数の1次式の根にはならない数が無理数なのです.無理数の中でも,整数係数多項式の根となる数が代数的数(例:3√5はx^3−5=0の根)であり,それに対して,超越数とは,整数係数のどのような代数方程式の根にもならない数(例:π,e)のことです.代数的数の全体をQ~と書くことにします.
一方,αが代数的整数であるとは,整数係数のモニック多項式
f(x)=x^n+a1x^(n-1)+・・・+a0
に対して,f(α)=0となることです.代数的整数の全体をZ~と書くことにします.
体kにf(x)=0の根αを添加した体をk(α)と書きます.複素数体Cは実数体Rにx^2+1=0の根iをつけ加えたR(i)であり,Cの元は
a+bi (a,bは実数)
と一意に表されます.
同様にして,x^2−d=0の根√dを添加して得られる体k(√d)を考えることができます.2次体k(√d)の元も一意的に
a+b√d
の形で表されます.
k=Qのとき,一般に0,1以外の平方因数をもたない整数m,すなわち, −1,±2,±3,±5,±6,±7,±10,・・・
によって,Q(√m)は体になります.
Q(√m)を2次体とするとき,a+b√mの共役をa−b√mで表します(m<0ならば通常の複素共役である).このとき,その標準底は
ω=√m m=2,3(mod4)
ω=(1+√m)/2 m=1(mod4)
で与えられます.
実2次体の基本単数は一意に定まります.Q(√m)を実2次体とすると,
[1]m=2,3(mod4)のとき
基本単数を
ε=a+b√m
とすると
ε~=a−b√m
εε~=a^2−mb^2=±1
また,
ε^n=an+bn√m
と書くと0<a1<a2<・・・,0<b1<b2<・・・より,a,bはペル方程式:
a^2−mb^2=±1
の解の中で(a,b)が最小なものとして与えられます.
すなわち,Q(√2),Q(√3),Q(√6),Q(√7)の基本単数を求めると,それぞれ,
x^2−2y^2=±1,複号は−1で(1,1)が最小→ε=1+√2
x^2−3y^2=±1,複号は+1で(2,1)が最小→ε=2+√3
x^2−6y^2=±1,複号は+1で(5,2)が最小→ε=5+2√6
x^2−7y^2=±1,複号は+1で(8,3)が最小→ε=8+3√7
[2]m=1mod4のとき
基本単数を
ε=(a+b√m)/2 a=b(mod2)
と書けば
a^2−mb^2=±4
したがって,Q(√5),Q(√13)の基本単数を求めると,それぞれ,
x^2−5y^2=±4,複号は−4で(1,1)が最小→ε=(1+√5)/2
x^2−13y^2=±4,複号は−4で(3,1)が最小→ε=(3+√13)/2
なお,ペル方程式の自然数解を求めることはそれほどやさしくはありません.Q(√199)を考えてみると,199=3(mod4)の素数ですが,
x^2−199y^2=±1
の最小解は
(16266196520,1153080099)
にもなってしまいます.
この解を求めるには√199の連分数展開
√199=[14;9,2,1,2,2,5,4,1,1,13,1,1,4,5,2,2,1,2,9,28,・・・]
を用います.9〜28は循環節(周期20)です.
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