■五次方程式の非可解性(その14)
方程式
f(x)=x^3−(s−3)x^2−sx−1=0
に対して,
f(−1/(x+1))=(−1/(x+1))^3f(x)
が成り立つ.
したがって,f(α)=0であれば,f(−1/(α+1))=0.さらにx=−1/(α+1)を−1/(x+1)に代入すれば,f(−(α+1)/α)=0.さらにx=−(α+1)/αを−1/(x+1)に代入すれば,f(α)=0に戻るので,Q(α)は巡回3次体と呼ばれる.
この方程式の実根をαで表すとき,数体
Q(α)={a+bα+cα^2|a,bは有理数}
は他の二つの根を含んでいる.すなわち,他の2根は
β=−1/(α+1),γ=−(α+1)/α
で与えられ,最小分解体は
Q(α)=Q(β)=Q(γ)
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巡回群Cnはよいとして,二面体群Dnがわからない.
D3(=S3):x^3−sx−s=0
3次方程式の根の公式より,根を
α=(−c/2+((−c/2)^2+(b/3)^3)^1/2)^1/3+(−c/2−((−c/2)^2+(b/3)^3)^1/2)^1/3
で表す.x^3−sx−s=0の場合,
α=(s/2+((s/2)^2+(−s/3)^3)^1/2)^1/3+(s/2−((s/2)^2+(−s/3)^3)^1/2)^1/3
判別式は
D(f)=6^2((s/2)^2+(−s/3)^3)=(4s^3−27s)=s^2(4s−27)
判別式D(f)=0はこの3次方程式が重根をもつための必要十分条件である.
また,D(f)>0のとき,f(x)=0は相異なる3実根をもつ.
この3次体が巡回3次体であるための必要十分条件はs^2(4s−27),したがって(4s−27)がQのなかで平方数になっていることである.すなわち,因数(4s−27)がQ内で平方(例えばs=7,31/4,9,43/4,13,・・・)であれば,3次体は巡回3次体である.s=0,27/4の場合,判別式が0になって重根をもつ.
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正n角形の表と裏を区別することから二面体群と呼ばれるが,その位数は2nである.したがって,D3の位数は6である.
群でなく体の話をするが,体Kでは四則演算が与えられており,加法と乗法はともに結合法則と交換法則を満たし,両者は分配法則で結ばれている.また,加法と乗法はそれぞれ零元と単位元と逆元(加法については−a,乗法についてはa^-1)をもつ.
二面体群D3とは位数6の集合{α,β,γ,−α,−β,−γ}あるいは
{α,β,γ,α^-1,β^-1,γ^-1}={λ,1−λ,1/(1−λ),1/λ,λ/(λ−1),(λ−1)/λ}
のことかと思いきや,3次方程式であるから根は3つしか存在しないはずである.さりとて,3根α,β,γの置換6個のすべて(=S3)としてもおかしいことになる.
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