■素数の並び方に規則性はあるのか?(その19)
【2】ゼータの平均値とランダム行列の特性多項式の平均値
1918年,ハーディとリトツウッドは
1/T∫(0,T)|ζ(1/2+it)|^2dt 〜 logT
すなわち,ゼータの絶対値の2乗に関し,s=1/2上の長さTの平均値がlogTであるという結果を示した.
より高いベキ乗では平均値はどうなるのだろうか? 1926年,イングハムは
1/T∫(0,T)|ζ(1/2+it)|^4dt〜(logT)^4/2π^2
を示した.
また,ゼータのk乗に関して
ζ(s)^k=(Σ1/n^s)^k=Σdk(n)/n^s
ここで,dk(n)はnをk個の自然数の積で表す表し方の総数を与えるディリクレ級数となることから,1984年,コンリーは漸近評価式
1/T∫(0,T)|ζ(1/2+it)|^2kdt〜ck(logT)^2^k2
が成り立つだろうと予想した.
gk=∫(0,T)|ζ(1/2+it)|^2k/∫(0,T)|Σdk(n)/n^1/2+it| (T→∞)
と定義すると
g1=1,g2=2,g3=42
となる.
k≧4の予想は困難だろうと思われたのだが,キーティキングはゼータ関数の固有値が行列の固有値のようなものだとすれば,ゼータ関数の平均は特性多項式の平均値に関係があるだろうと推測し,
gk=(k^2)!/1・2^2・・・k^k・(k+1)^k-1・・・・(2k−1)
を得た.
この式は
g1=1,g2=2,g3=9!/1・2^2・3^3・4^2・5=42
を満たし,k=4については
g4=16!/1・2^2・3^3・4^4・5^3・6^2・7=24024
となり,その後のコンリーの計算結果と一致した.
もはや,ゼータ関数の平均とランダム行列の特性多項式の関係を疑う者はいない.これが端緒となり,ゼータ関数の平均とランダム行列の特性多項式の関係について,種々の結果が得られている.
[参]小山信也「素数からゼータへ,そしてカオスへ」日本評論社
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