■フェルマーの最終定理と楕円曲線(その17)
【3】q展開
F(q)=qΠ(1-q^n)^2(1-q^11n)^2
において,n=1の場合の因子をΠの前にだす.25次以上の項は省略してQ25と書くことにすると,
F(q)=q(1-q)^2(1-q^11)^2Π(1-q^n)^2(1-q^11n)^2
=q(1-2q+q^2)(1-2q^11+q^22)Π(1-q^n)^2(1-q^11n)^2
=(q-2q^2+q^3-2q^12+4q^13-2q^14+q^23-2q^24+Q25)Π(1-q^n)^2(1-q^11n)^2
n=2の場合の因子をΠの前にだす.
F(q)=(q-2q^2+q^3-2q^12+4q^13-2q^14+q^23-2q^24+Q25)(1-q^2)^2(1-q^22)^2Π(1-q^n)^2(1-q^11n)^2
=(q-2q^2+q^3-2q^12+4q^13-2q^14+q^23-2q^24+Q25)(1-2q^2+q^4)(1-2q^22+Q25)Π(1-q^n)^2(1-q^11n)^2
=(q-2q^2+q^3-2q^12+4q^13-2q^14+q^23-2q^24+Q25)(1-2q^2+q^4-2q^22+4q^24+Q25)Π(1-q^n)^2(1-q^11n)^2
=(q-2q^2-q^3+4q^4-q^5-2q^6+q^7-2q^12+4q^13+2q^14-8q^15+2q^16+4q^17-2q^18-q^23+2q^24+Q25)Π(1-q^n)^2(1-q^11n)^2
以下,n=3,4,5,・・・の場合の因子をΠの前にだすという根気のいる計算が続く.結局,手計算はあきらめて阪本ひろむ氏にmathematicaで計算してもらうことになった.
F(q)=qΠ(1-q^n)^2(1-q^11n)^2
=q-2q^2-q^3+2q^4+q^5+2q^6-2q^7-2q^9-2q^10+q^11-2q^12+4q^13+4q^14-q^15-4q^16-2q^17+4q^18+2q^20+2q^21-2q^22-q^23-4q^25-8q^26+5q^27-4q^28+2q^30+・・・
この結果,
p 2 3 5 7 11 13 17 19 23
Np 4 4 4 9 10 9 19 19 24
c(p)−2 −1 1 −2 1 4 −2 0 −1であるから,Np+c(p)=pという関係が成り立つことが確かめられた.
F(z)のフーリエ係数c(n)を使って,ディリクレ級数
φ(s)=Σc(n)/n^s
を定義する.ディリクレ級数はリーマンのゼータ関数
ζ(s)=Σ1/n^s
を一般化したものである.ラマヌジャンは,このとき,
L(s;E)=φ(s)
を予想している.
この予想は,1954年,アイヒラーが楕円曲線:y^2±y=x^3−x^2のゼータ関数と保型形式:F(z)=qΠ(1-q^n)^2(1-q^11n)^2のゼータ関数が,すべての素数に対して一致することを示すことによって解決されたのである(アイヒラー・井草).
アイヒラーが示したラマヌジャン予想「解析的ゼータ=代数的ゼータ」は,ゼータの統一の先駆けであったのだが,これは谷山予想(谷山・志村・ヴェイユ予想)の特別な場合に相当している.
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