■素数の並び方に規則性はあるのか?(その8)

ゼータ関数は,整数をわたる無限和(ディリクレ級数)

  ζ(s)=Σ1/n^s

として定義される関数である.

 

 また,ゼータ関数は素数全体をわたる無限積

  ζ(s)=Π(1−p^(-1))^(-1)

      =Π(1+1/p^s+1/p^2n+1/p^3n+・・・)

      =(1+1/2^s+1/2^2n+1/2^3n+・・・)(1+1/3^s+1/3^2n+1/3^3n+・・・)(1+1/5^s+1/5^2n+1/5^3n+・・・)・・・

に等しいことがわかっている.右辺

  Π(1−p^(-1))^(-1)

はディリクレ級数を丸ごと素因数分解したようなものであって,オイラー積と呼ばれる.

 

 リーマン予想は,一部に素数定理なども含む数学上の最大の難問であって,素数定理

  π(x)〜x/logx

を精密化する問題と考えることができる.リーマン予想は素数定理と切っても切り放せない関係なのである.

 

 部分積分により

  ∫(2,x)dt/logt=x/logx+1!x/(logx)^2+・・・+(m−1)!x/(logx)^m+・・・ であるから,素数定理はπ(x)の初項だけを求めた定理であるといえるだろう.そこで素数に関する未解決問題を解くにはリーマン予想の証明が重要になってくるのである.

 

 素数定理はπ(x)の初項だけを求めた定理であるといえる.それからの自然な流れとして,π(x)の第2項は何かという問題がおこってくるが,誤差項

  O(x/logx)

において,x→∞のとき,logxはxに較べて十分小さいのでこれを無視して「ほぼxの1乗に等しい」と考えることができる.

 

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 素数定理

  π(x)〜x/logx

は,ガウス以降,多くの数学者たちが証明できなかった難問であったのだが,ガウスの予想から約100年後の1896年,フランスの数学者アダマールとプーサンは,同じ年に独立にリーマンによって複素数まで拡張されたゼータ関数を用いてガウスの素数定理を証明した.

 

 彼らが素数定理を証明したとき,実際に示したのは

  π(x)=Li(x)+O(xexp(−c(logx)^(1/2)))

が成り立つということであった.すなわち,誤差項のlogxは無視できるので,xの1乗に等しいということになる.

 

 この誤差項はゼータ関数の零点の非存在に依存していて,O(x^e)と表されるとすると,ゼータ関数の零点の実部の最大値に等しくなることがわかっている.したがって,もしリーマン予想「リーマンのゼータ関数ζ(s)の実部が0と1の間にあり,零点の実部はすべて1/2である」が正しければ,この近似を

  π(x)=Li(x)+O(x^(1/2)logx)

のようにもっとよくすることができる(フォン・コッホ,1901年).

 

 ランダムなデータの誤差項はO(x^(1/2))程度であろうというのが,ガウス分布の考え方である.しかし,素数定理の誤差評価はO(x^1)であり,x^(1/2)はおろかx^(3/4),さらにはx^(9999/10000)さえも証明されていない.現在知られている最良の評価

  O(xexp(−c(logx)^(0.6)(loglogx)^(0.2))

もO(x^(1/2))と較べるとまだはるかに迂遠である.

 

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