■タブーを破った定理(その1)
任意の角の三等分が出てくる有名な定理がある(モーリーの定理)。この美しい定理が20世紀まで発見されなかったことについて、コクセターは
「角の三等分に触れることは1種のタブーだった」
と書いている。
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ユークリッドは3つの角を2等分することで内心を見つけたのですが,モーリーは3つの角を3等分するとどうなるかを問題にして,モーリーの定理「任意の三角形において,各内角の3等分線の隣同士の交点を結んで得られる三角形は正三角形である」を発見しました(1899年).1899年まで誰一人としてこの正三角形の存在に気づかなかったのです.
この驚くべき基本的な定理が2000年という長い間,20世紀直前にいたるまで発見されなかった理由は角の3等分問題は解けないことが判明していたところにあるのでしょう.モーリーの定理(1899年)のような基本的事実が長い間見過ごされてきたのも,角の三等分の評判があまりにも悪名高く,まともに取り上げようとする数学者が皆無だったせいなのでしょう.(しかし,角の三等分は作図できないにしても,三等分線そのものは確かに存在し別の方法を使えば作図できるのです.)
モーリーは(各内角の3等分線でなく)三角形に内接するカージオイドの研究する過程で,この定理を発見しました.カージオイドの中心は正三角形を描き,中心が正三角形の頂点のとき,4点で接することがわかっています.
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オイラー線(1767年)はユークリッド,アルキメデス,ヘロンを始めとするたくさんの幾何学者が見落としていた三角形の基本的な性質ですし,1821年まで誰一人として9点を通る円の存在に気づかなかったのです.
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