■ロンパリ(その20)
a=1の場合が九章算術の鼈臑(1/6立方体)であり,a=1/√3の場合がパウル・シャッツ立体(1/18立方体)である.
これを一般化して,たとえばa=1/√2の立体(1/12立方体)を作ることは容易である.空間充填三角錐でかつその展開図が平面充填図形(平行六辺形)となっている立体という条件を保ったまま,一般化してみることにしよう.
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【1】一般化パウル・シャッツ立体の計量
一般化したパウル・シャッツ立体は,6辺の辺長が
1,a,a,(a^2+1)^1/2,(a^2+1)^1/2,(2a^2+1)^1/2
で,2種類の直角三角形
(1,a,(a^2+1)^1/2)2枚・・・内角(=arctana)
(a,(a^2+1)^1/2,(2a^2+1)^1/2)2枚・・・内角(=arctan(a^2+1)^1/2/a)
からなる四面体である.
相対する1組の稜(辺長aの辺)は直交し,4頂点の座標は
A(0,0,0)
B(1,0,0)
C(0,a,0)
D(1,0,a)
と表せる.
これをもとにして二面角を計算すると,
a=1 → 45°,60°,90°
a=1/√2 → 35.2644°,70.5288°,90°
a=1/√3 → 30°,75.5225°,90°
となる.
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【2】中央の穴が閉じたとき,片面が正多角形の平面になるための条件
パウル・シャッツ環はパウル・シャッツ立体(a=1/√3)3対を使ったサメの顎のような動くおもちゃで,輪郭が正六角形となるとき中央には正三角形の穴があき,中央の穴が閉じたとき片面は正三角形の平面になる.
6個が中心の1点に会したとき,片面が平面となり中央の穴が閉じるためには,直角三角形(1,a,(a^2+1)^1/2)のひとつの内角が60°となることが必要である.
arctana=π/6 → a=1/√3(パウル・シャッツ立体)
もし,一般化したパウル・シャッツ立体4対を使った環の8個が中心の1点に会したとき,片面が平面となり中央の穴が閉じるためには,直角三角形(1,a,(a^2+1)^1/2)のひとつの内角が45°となることが必要であるから,
arctana=π/4 → a=1(鼈臑)
鼈臑は8個の環で連続回転が可能になり、中央の穴が閉じた形をとるが,実際に動かしてみると遊びがあり,同じ角度でも取り得る形はひとつに決まらない.それに対して,6個のパウル・シャッツ立体からなる環は常にタイトで,角度を決めれば形が一通りに定まる1自由度の系である.パウル・シャッツ環の秀逸さを示すものであろう.
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