■ガウス曲率とジェルマン曲率(その2)

 曲面の各点で曲がり方が最もきつい方向と緩やかな方向がありますが,ガウス曲率は曲率の最大値と最小値の積で定義され,一方,平均曲率とは2方向の曲率の相加平均で定義されます.

 

 曲面の性質を調べるとき,曲面の内的情報だけで記述できるものと,外の世界からの観測データを本質的に必要とするものとがあります.ガウスは,ガウス曲率が曲面の内部の情報だけで決定でき,外部情報に依存しないことを発見しました.そのとき,ガウスは相当ブッタマゲタらしく,この定理を「驚異の定理」と呼んでいます.

 

 われわれは地球が平らでないことを星を観測するなど外的な情報を用いて認識していますが,ガウス曲率のような手がかりを使えば,曲面人にとっても外部情報なしに,地球が平らでないことを認識できることになるというわけです.

一方、フランスにガウスと独立に曲面の幾何学を構想していた数学者がいたことが知られている。彼女の名前はソフィー・ジェルマン。フェルマーの最終定理の証明の歴史にもかかわった女性数学者である。ジェルマン曲率=曲率の最大値と最小値の平均値、にも名を残している。平均曲率にも重要な意味がある。

 

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【1】平均曲率一定曲面(石けん膜の幾何学)

 

 ガウス曲率が曲面の内在的量であるのに対して,平均曲率は曲面の外在的量として,空間での曲面の置かれ方を測る重要な量です.実は,体積固定の表面積の変分問題は,平均曲率一定曲面に対応しています.すなわち,平均曲率が一定(≠0)の曲面は,体積一定のまま表面積を最小にすることによって得られます.

 

 また,平均曲率が至るところ0である曲面を極小曲面といいます.針金で輪を作って石けん液に浸して取り出せば,張られる石けん膜は表面張力によって面積が最小になるという幾何学的な意味を持っています.すなわち,極小曲面=表面積最小曲面なのですが,平面でない極小曲面の例として,懸垂面,常螺旋面,エネッパー曲面,シェルク曲面など,極小曲面についても非常に多くの例と結果が知られています.

常螺旋面(ヘリコイド)はらせん階段を滑らかにした形であって、面の上のあらゆる点で平均曲率が0になる曲面で、表面積が最小になるという意味で、極小曲面とも呼ばれる。ヘリコイドによく似た可展面「類似らせん面」(ヘリカル・コンボリュート)もあるので注意。

 懸垂面(カテノイド)は極小曲面(表面積最小曲面)の重要な例で,カテノイドはカテナリーをx軸を軸として回転させたときにできる曲面です.回転面かつ極小曲面は懸垂面(カテノイド)に限られるのですが,回転面で平均曲率一定曲面は球面とは限りません.このような曲面はドローネー曲面と呼ばれています.1841年,ドローネーは,平均曲率一定の回転面をすべて決定し,それが平面・円柱面・球面・懸垂面・アンデュロイド・ノドイドに分類されることを示しました.

 

 また,ホップの予想「球面がただひとつの閉じた平均曲率一定曲面である」は正しいと思われていたのですが,1984年,ヴェンテによって,平均曲率一定な閉曲面は,球面以外にいくらでも存在することが証明されました.この球面とは異なる平均曲率一定曲面の反例を契機に,平均曲率一定曲面の研究は大きな進展をみせることとなりました.

 

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