■時代を超えて(その5)
その道の第一人者をアルファ,二番手をベータと呼びます.また,完成版でないものをベータ版と呼びますが,オイラーの多面体定理はベータということになります.
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【1】オイラーの多面体定理
凸多面体の頂点,辺,面の数をそれぞれv,e,fとすると,
v−e+f=2 (オイラーの多面体定理)
が成り立ちます.これは3次元立体について,0次元の特性数であるv,1次元の特性数であるe,2次元の特性数であるfの関係を述べたものと解釈されます.
量(v−e+f)はオイラー標数と呼ばれます.オイラー標数は幾何学において重要な概念である位相不変量の草分けであり,一般に,図形がいくつかの3角形によって分割されているとき,
頂点の数−辺の数+3角形の数
は分割の仕方によらず定まり,図形に固有な量になるというものです.例えば,平面図形(多角形)は,1つの面が無限大となって全体が一面に広がってしまった正多面体と解釈することができますから,オイラー標数は1となり,また,種数(穴の数)gの向き付け可能な閉曲面の場合は2−2gとなることはよく知られています.
オイラーの多面体定理を一般化したものが,オイラー・ポアンカレの定理です.オイラー数はベッチ数の交代和
Pv−Pe+Pf−Pg+Ph−Pi+・・・
に等しいというのが,オイラー・ポアンカレの内容ですが,ベッチ数とは,形には関係しないで,接触と分離にだけ関係するトポロジカルな示性数で,簡単にいえば図形の中に潜む種々の次元の穴の数のことです.
二次元における正多角形,三次元における正多面体と同じ概念が,四次元における正多胞体で,正(5,8,16,24,120,600)胞体の6種類あります.胞の個数をcで表すと,4次元空間では,
v−e+f−c=0
というオイラー・ポアンカレの定理が成り立っています.
ところで,線分と三角形および四面体は,それぞれ最も簡単な1次元図形,2次元図形,3次元図形です(単体:シンプレックス).線分は2つの端点(0次元の境界要素)をもち,その内部は1次元です.三角形は3つの頂点(0次元)と3つの辺(1次元)をもち,その内部は2次元です.四面体は4つの頂点(0次元)と6つの辺(1次元)および4つの面(2次元)をもち,その内部は3次元です.これらの数をまとめて書くと
2,1
3,3,1
4,6,4,1
ですが,これらの数はパスカルの三角形の一部分に相当しています.これから類推すると4次元のシンプレックスは5,10,10,5,1,すなわち5つの頂点と10辺,10面,5面,5胞(正5胞体)になります.
一般に,n次元単体については,
v=n+1C1,e=n+1C2,f=n+1C3,c=n+1C4,・・・,
また,
n+1C0−n+1C1+n+1C2−n+1C3+・・・+(-1)^(n+1)n+1Cn+1=0
ですから,
Pv−Pe+Pf−Pg+Ph−Pi+・・・=1±1
すなわち,オイラー標数は,nが奇数のとき2,偶数のとき0になることが理解されます.
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正単体:fk=(n+1,k+1)
はオイラー・ポアンカレの定理を満たしますが,
正軸体:fk=2^k+1(n,k+1)
立方体:fk=2^n-k(n,k)
ついても調べてみましょう.
(2+x)^n=Σ(n,k)2^n-kx^k
において,
x=−1とおくと,
nC0・2^n−nC1・2^n-1+nC2・2^n-2−nC3・2^n-3+・・・+(-1)^n)nCn・2^0=1
すなわち,オイラー標数は,nが奇数のとき2,偶数のとき0になることが理解されます.
また,
立方体:fk=2^n-k(n,k)
において,k→n−k−1と置き換えると
正軸体:fk=2^k+1(n,n−k−1)=2^k+1(n,k+1)
となる.
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