■クラスレート水和物の世界(その2)

【5】5角形面をもつ空間分割

 金属ガラスの構造で最も多い面の数はf=14(〜35%),ついでf=15(〜25%)とf=13(〜20%),面の形ではp=5(〜40%),次がp=6(〜30%),p=4(〜20%)と続く.面の数の平均値はおよそf=13.6,面あたりの辺の数の平均値はおよそp=5.12であるという.

 空間分割では面は多かれ少なかれ曲面となるのが通例であるから,多面体は面が曲面であっても辺が曲線であってもかまわないという前提をおいて考えてみよう.

 分割された空間から1個の多面体を分離して考えてみると,1個の頂点に3本の辺が集まり,1辺は2個の頂点を結ぶから

  2e=3v

また,オイラーの多面体定理

  v−e+f=2

により,

  v=2(f−2),e=3(f−2)

つまり,面の数fが与えられれば頂点の数vと辺の数eは一義に決まり,頂点の数は必ず偶数になることがわかる.そこで,f=14なる多面体について調べてみると

  v=2(f−2)=24,e=3(f−2)=36

 つぎに,面が何角形になるかを求めてみると,これはもちろん1通りではないが,1本の辺は2個の面によって共有されることを考慮し,各頂点に平均してp角形がq面が会するとすると,pf=2e,qv=2eより,その平均辺数pと平均会合面数qは

  p=2e/f=5.14・・・

  q=2e/v=3

を得ることができる.

 このことから,14面体の面のかたちについては,必然的に辺数5を中心とする分布をなすことが示唆される.このことは,経験的に5角形の頻度が最も高いという観察結果に一致しているのである.

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