■2色定理の証明(その4)

 20世紀のうちに解決された悪名高き難問に,四色問題「任意の平面地図は高々4色で色分けできるか?」がある.この命題が正しいとの予想は170年前になされたのであるが、120年余り証明がなされなかった。

1976年,ハーケンとアッペルは4色問題(1852年)が正しいことを示した.4色問題(平面上の地図を塗り分けるには4色が必要かつ十分である)は素人でも理解できる問題である.見た目には簡単には思えるが,実は容易に解ける問題ではなく,多くの間違った証明を生み出し,失敗と部分的解決が繰り返されてきた悪名高い問題であるが,かくして4色問題は4色定理となった.

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 ケンペの職業は弁護士であったが,非常に優秀なアマチュア数学者でもあった.1879年には四色定理の不完全な証明をしたことで最も有名である.数学史上もっとも有名な間違った証明とされ、10年余り間違いが見つからなかった。(彼の証明には欠陥があったものの,全体的な考え方は非常に聡明なものであったという.)

 5色で色分けできることはヒーウッドによって100年以上も前から知られていたが,四色問題が肯定的に解決されたのは1970年代後半のことで,アペルとハーケンはコンピュータを使ってこの証明を成し遂げた.四色問題の証明は場合分けの数が膨大で,コンピュータによる解析に依存せざるを得なかったのである.

 3次元のn個の領域を塗り分けるにはn色必要な例を作ることができる.それに対して2次元では「どんな平面地図でも4色で塗り分けられる」ことが証明されたのだが,多くの数学者はこの証明においてコンピュータによる解析が本質的だと知ると落胆し,失望したと伝えられている.

 その証明は1995年にロバートソンらによって改良されてかなり簡単になったとはいえ,いまだ手計算で証明を完成させた人はいない.証明の技術的な困難さは克服されず,完全に決着したとはいいがたいのである.ともあれ,四色問題がグラフ理論の発展に対する推進力となったことは確かである.

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