■素数の分解(その6)

 ミンコフスキーはアインシュタインの先生として有名で,相対論における基本概念はミンコフスキーにその起源をたどることができます.彼は数論家として出発しましたが,研究を進めるにしたがって次第に幾何学に興味を惹かれるようになり,幾何学的方法を用いて数論を研究する「数の幾何学」と呼ばれる新しい数学分野を打ち立てました.

 格子点定理が数の幾何学の基礎となっているのですが,格子点定理は次のように述べることができます.

 「平面(n次元空間)上の任意の単位格子において,1つの格子点を中心として1辺の長さが2の正方形(面積4の平行四辺形,面積2^nの中心対称な凸体)を任意の向きにおいてみると,内部あるいは境界上にもうひとつの格子点が必ず存在する.」

 この定理は非常に単純であるにもかかわらず,他の方法では解決することのできなかった数論における多くの問題を解明したのですが,格子点定理を用いると,初等的な定理,たとえば,

  「4k+1の形の素数はx^2^+y^2の形に書ける」

  「6k+1の形の素数はx^2^+3y^2の形に書ける」

  「8k+1の形の素数はx^2^+2y^2の形に書ける」

なども証明することができます.2次形式の理論が発展していく段階では,ミンコフスキーが非常に大きな貢献をしていて,格子点の幾何学はミンコフスキーの「数の幾何学」に端を発するのです.

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[1]x^2+1=0   (mod p)はpが4m+1の形をしているとき,そのときに限り解ける.

 合同式が解けるための条件は

  (−1/p)=(−1)^(p-1)/2

[2]x^2+2=0   (mod p)はpが8m+1または8m+3の形をしているとき,そのときに限り解ける.

 合同式が解けるための条件は

  (2/p)=(−1)^(p^2-1)/8

[3]x^2+3=0   (mod p)はpが6m+1の形をしているとき,そのときに限り解ける.

 合同式は(−3/p)=1ととき,そのときに限り解ける.

  (−3/p)=(p/3)

  pが6m+1の形のとき1,6m+5の形のとき−1

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 2平方和定理「2より大きい素数が2つの整数a,bを用いて,p=a^2+b^2と表されるためには,pが4n+1型素数であることが必要十分である」は,ガウス整数の世界では

  p=(a+bi)(a−bi)

と素因数分解される条件を与えている定理であるとみることができる.

  3n+1型素数は,x^2+3y^2の形に表すことができる.

  4n+1型素数は,x^2+y^2の形に表すことができる.

  4n+3型素数は,x^2+y^2の形に表すことができない.

  5n+1型素数は,x^2−5y^2の形に表すことができる.

  5n+2型素数は,x^2−5y^2の形に表すことができない.

  5n+3型素数は,x^2−5y^2の形に表すことができない.

  5n+4型素数は,x^2−5y^2の形に表すことができる.

  8n+1型素数は,x^2−2y^2の形に表すことができる.

  8n+3型素数は,x^2−2y^2の形に表すことができない.

  8n+5型素数は,x^2−2y^2の形に表すことができない.

  8n+7型素数は,x^2−2y^2の形に表すことができる.

  8n+1型素数は,x^2+2y^2の形に表すことができる.

  8n+3型素数は,x^2+2y^2の形に表すことができる.

  8n+5型素数は,x^2+2y^2の形に表すことができない.

  8n+7型素数は,x^2+2y^2の形に表すことができない.

  12n+1型素数は,x^2−3y^2の形に表すことができる.

  12n+5型素数は,x^2−3y^2の形に表すことができない.

  12n+7型素数は,x^2−3y^2の形に表すことができない.

  12n+11型素数は,x^2−3y^2の形に表すことができる.

  20n+1型素数は,x^2+5y^2の形に表すことができる.

  20n+9型素数は,x^2+5y^2の形に表すことができる.

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 素数pがx^2+ny^2の形に表せるという問題は,虚2次体Q(√−n)のイデアル類群が深い関係にあることを示唆している.

  4n+1型素数は,x^2+y^2の形に表すことができる.

  8n+1型素数は,x^2+2y^2の形に表すことができる.

  8n+3型素数は,x^2+2y^2の形に表すことができる.

  3n+1型素数は,x^2+3y^2の形に表すことができる.

  7n+1型素数は,x^2+7y^2の形に表すことができる.

  7n+2型素数は,x^2+7y^2の形に表すことができる.

  7n+4型素数は,x^2+7y^2の形に表すことができる.

はそれぞれ虚2次体Q(√−1),Q(√−2),Q(√−3),Q(√−7)の類数が1であることが本質的なのである.

 1966年,ベイカーとスタークは独立に類数1の虚2次体Q(√d)すなわち(d<0,dは平方因子をもたない)なる2次体をすべて決定したが,それによると,

  −d=1,2,3,7,11,19,43,67,163

の9個に限られる.

 なお,類数1の実2次体Q(√d)は無数に存在するであろうというガウス予想は現在でも未解決である.

[補]虚2次体Q(√d)の整数環がユークリッド整域となるのは,

  −d=1,2,3,7,11

の5つの場合に限る.実2次体Q(√d)に対しては

  d=2,3,5,6,7,11,13,17,19,21,29,33,37,41,57,73

に限ることが知られている.

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