■魚の膀胱?(その3)
半径が等しく,その中心が互いの円周上にある2円が重なり合った共通部分のレンズ型(魚の形)の縦横比は1:√3になる.これはVesica Piscis(魚の膀胱?)として知られた神聖な形だそうであるが,膀胱はともかくとして確かに魚の形を想起させる.これは「ルーローの二角形」として知られた形でもある.
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Vesica Piscisを魚の膀胱?と訳したが,誤訳の可能性が高い.そもそも魚に膀胱があるのかどうかわからない.Vesicaは嚢状のものの意であって,精嚢・卵嚢が正しいと思われる.それとも浮き袋の意か?
同じ半径の2円を,それぞれの円周が相手の中心を通るように重ねて描いたこの図形はどうやら「魚の子宮」と訳すのが正しいらしい.
正五角形に対角線を描き入れると星形五角形(ソロモンの星)ができる.正五角形と星形五角形の入れ子はペンタグラムと呼ばれ,ピタゴラス派のシンボルマークであったことはよく知られている.魚の子宮もピタゴラス教徒にとっては宇宙全体に生命を与える象徴的な子宮だったというわけである.
円の半径を1とすると,魚の子宮図の中には√2,√3さらには√5の長さの線がみつかり,それから黄金比φも作図できる.ピタゴラス教団の通約不能の概念を崩したのは皮肉にもペンタグラムであり,魚の子宮であったというわけである.
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