■トーラスの計量(その10)

 原点を通る平面の方程式を

  u=(−sinθ,0,cosθ),u・x=0

すなわち,

  −xsinθ+zcosθ=0,z=tanθ・x=mx

とする.

  z=mx  (m=0〜tanα)

を代入すると

  (1+m^2)x^2+y^2−2r1(x^2+y^2)^1/2+r1^2−r0^2=0

  (1+m^2)x^2+y^2+r1^2−r0^2=2r1(x^2+y^2)^1/2

  {(1+m^2)x^2+y^2+r1^2−r0^2}^2=4r1^2(x^2+y^2)

となって,あとが面倒である.

 そこで,座標軸を回転させる.(その1)では

  x=Xcosθ+Zsinθ

  z=−Xsinθ+Zcosθ

としたが,

  x=Xcosθ−Zsinθ

  z=Xsinθ+Zcosθ

だって同じことで,Z=0平面との交線を求めるから,

  {(X^2cos^2θ+Y^2)^1/2−r1}^2+X^2sin^2θ=r0^2

  (X^2+Y^2)−2r1(X^2cos^2θ+Y^2)^1/2+r1^2−r0^2=0

  {(X^2+Y^2)+r1^2−r0^2}^2=4r1^2(X^2cos^2θ+Y^2)

  (X^2+Y^2)^2+2(r1^2−r0^2)(X^2+Y^2)+(r1^2−r0^2)^2=4r1^2(X^2cos^2θ+Y^2)

となって,これは4次曲線である.

 θ=αとおいたが,θ=−αでも同じことで

  cos^2θ=(r1^2−r0^2)/r1^2

  (X^2+Y^2)^2−2(r1^2−r0^2)X^2−2(r1^2+r0^2)Y^2+(r1^2−r0^2)^2=0

 もし,cos^2θ=r0^2/r1^2ならは

  (X^2+Y^2)^2−2(r1^2+r0^2)X^2−2(r1^2+r0^2)Y^2+(r1^2+r0^2)^2=4r1^2r2^2

  (X^2+Y^2)^2−2(r1^2+r0^2)X^2−2(r1^2+r0^2)Y^2+(r1^2+r0^2)^2=4r1^2r2^2

  (X^2+Y^2)^2−2(r1^2+r0^2)(X^2+Y^2)+(r1^2+r0^2)^2=4r1^2r2^2

  X^2+Y^2−(r1^2+r0^2)=±2r1r2

  X^2+Y^2=(r1±r0)^2

これは円であるが,トーラスの赤道面なので求めたい交線

  X^2+Y^2=r1^2−r0^2

とは異なる.

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[補]天文学者カッシーニ

 カッシーニ(1625-1712)は偉大な天文学者で,土星にはホイヘンスの発見した衛星タイタンのそばにさらに4個の衛星があること,土星の輪には隙間があり,2個の輪からなっていることを発見しました.この隙間はカッシーニの空隙と呼ばれています.

 カッシーニはまた木星と土星が自転していることを証明したり,地球と太陽の距離を正確に測定しました.しかし,ニュートンの重力理論には反対の立場をとり,ケプラーの楕円軌道論に反対して凸卵形を提案しました.カッシーニの凸卵形はこのとき提案された4次曲線なのです.

 また,ニュートンは地球の回転の影響から地球の形は自らの遠心力で赤道でいくらか膨らんでいると主張しましたが,反ニュートン派のカッシーニはこれに反対し,地球の自転もエーテルの動きによって引き起こされ,エーテルの外圧によって地球の形が極方向に伸びた紡錘形であると主張しました.現在からみるとニュートンの考えは自然に思えますし,当時でもその現象は木星と土星ではっきり観察できたようです.

 1735年,両説の真偽に決着をつけるため,地球の形状を測定する探検隊がアイスランドとエクアドルに派遣されました.北極での緯度1度と南極でのの長さを測定して比較しようと試みたのです.アイスランド探検隊の測定はすんなりいきましたが,エクアドル探検隊は波乱と困難の連続になったようです.大きな危険を冒しながら,エーテル(宇宙のゆりかご)は存在しないという新しい世界観を獲得することができたのです.

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