■トーラスの計量(その4)

 今回のコラムでは,トーラス面上の正則地図は3種類だけであることを証明する.その前に・・・

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【1】平面上の正則地図

 正多角形は無限に多く存在しますが,それでは,「互いに合同な正多角形を隙間も重なりもないように並べて平面を完全に埋める仕方が何通りあるでしょうか?」この問題は昔から知られていて,それが3種類に限ることは以下のようにして証明されます.

 正多角形の中で平面をタイル張りのように隙間なく埋めつくすことができる平面充填形では,各頂点に正p角形がq面が会するとすると,正p角形の一つの内角は2(1−2/p)×90°であり,一つの頂点の回りの内角の和はこれがq個集まって四直角ですから,

  2q(1−2/p)=4,すなわち,

  1/p+1/q=1/2   (p,q≧3)

  (p−2)(q−2)=4

で,この条件を満たす(p,q)の組は(3,6),(4,4),(6,3)の3通りしかありません.したがって,平面充填形は正三角形,正方形,正六角形の3つだけです.このうち正方形のは碁盤,正六角形のは蜂の巣などでおなじみでしょう.

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【2】球面上の正則地図

 2次元の平面の中に正多角形は無限に多くあるのに反して,3次元の空間には無限に多くの正多面体は存在しません.平面充填形は,面数が無限大となって全体が一面に広がってしまった正多面体と解釈することができますが,平面充填形の場合と同様にして,正多面体の各面を正p角形,各頂点にq面が会するとすると,頂点の周囲は4直角未満ですから,不等式

  2q(1−2/p)<4,すなわち,

  1/p+1/q>1/2   (p,q≧3)

  (p−2)(q−2)<4

が正多角形となる必要条件です.このような整数の組は(p,q)=(3,3),(3,4),(3,5),(4,3),(5,3)の5通りで,それぞれ,正4面体,正8面体,正20面体,正6面体,正12面体に対応します.

 すなわち,正多面体は正4・6・8・12・20面体の5種類あって5種類しかないことはプラトンの時代にはすでに見つけられていて,それらがプラトンの自然哲学で重要な役割を演ずるところから,正多面体はプラトンの立体(Platonic solid)とも呼ばれています.

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 以上の解は平面(空間)を合同な多角形(多面体)で埋めることをユークリッド面(放物的)で考えたものですが,リーマン面(楕円的),ロバチェフスキー面(双曲的)を問題にするならば,解は非常に異なるものになります.楕円的平面(空間)では基本領域は有限個しかなく,有限個の基本領域をならべることによって全平面(空間)を埋めつくすことができます.一方,双曲的平面(空間)の場合には,無限に多くの種類の基本領域があり,全平面(空間)を隙間なく埋めるには無限個必要となります.ユークリッド平面(空間)はその中間で,基本領域は有限種類しかないが,全平面(空間)を埋めつくすには無限個必要であるというわけです.

  楕円的平面・・・(p−2)(q−2)<4

  放物的平面・・・(p−2)(q−2)=4

  双曲的平面・・・(p−2)(q−2)>4

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【3】トーラス面上の正則地図

 前節に掲げたことは球に関するオイラーの公式

  v−e+f=2

  qv=2e,pf=2e

を利用しても解けます.

 2番目,3番目の式を1番目の式に代入すると

  e(2/q+2/p−1)=2

ここで,t=4pq/(2p+2q−pq)とおくと,

  f=t/p,v=t/q,e=t/2

  (p−2)(q−2)<4

 トーラスに関するオイラーの公式は

  v−e+f=0

ですから,

  qv=2e,pf=2e

を再度利用すると,

  e(2/q+2/p−1)=0 → 2/q+2/p−1=0

  (p−2)(q−2)=4

となって,平面上の正則地図と同じ式が得られた.

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