■デューラーの八面体(その11)

 デューラーは1471年に生まれ,1528年に没しています.透視図法の発展を促し,有名な版画作品「メランコリアI」は彼の透視図法に対する関心の高さを示しています.メランコリー(黒胆汁質)は初めはよくない気質と考えられていたのですが,ルネサンス時代には芸術家的な気質,創造力に繋がるものとされていたようです.この版画には幾何学や建築に関係のあるいろいろな品物が描かれています.切頂菱面体(デューラーの八面体)はこの版画の中にある品物のひとつです.

 合同な菱形だけでできている平行六面体(菱面体)には2種類(太った菱面体とやせた菱面体)あって,細めで尖ったほうがacute(扁長菱面体),太めで平たいほうがobtuse(扁平菱面体)と呼ばれています.扁長菱面体の8頂点のうち6つは同心球面上に位置しますが,菱形の鋭角が3つ集まって構成される2つの頂点は球には内接しません.この頂点をうまく切頂すると球に内接する多面体が得られます.この切頂菱面体は五角形6枚と三角形2枚よりなる八面体で<デューラーの八面体>と呼ばれているそうです.

 デューラーの八面体は脳産物であると思っていたのですが,デューラーの八面体型の好物が実在するのだそうです.中川宏さん撮影の写真を掲げます.

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