■菱形とゾーンとベクトルの星(その5)
【1】渡辺泰成先生への質問
n次元立方体の投影図は1頂点からn本の辺がでますが,それらを取捨選択して菱形多面体を描く場合,どのようなルールで不要な線を消していくのか、よくわかりません.たとえば菱形90面体や132面体がまったくの試行錯誤で得られたものではないと思うのですが・・・
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【2】渡辺泰成先生からの回答
ご指摘の点につきましてお答えします.n次元超立方体は頂点からn本のベクトルが出ておますので重なりがでます.もともとはこの種の多面体タイリングは高い次元から射影して得られます.n次超立方体をr次元に射影する場合はr次元と直交するn−r次元の単位超立方体も窓を設定し,この窓に入っているベクトルのみを取り出してタイリングを行います.
菱形90面体の場合は10次元立方体なので,7次元立方体の窓を作り,ここに射影されたベクトルのうち窓に入っているベクトルのみによって6種類の菱面体格子からなる菱形90面体が得られます.これは下記の論文に簡単にまとめてあります.
[参]Forma, Vol. 9 (No. 3), pp. 233-238, 1994
射影理論の最も簡単なものは,2次元正方格子を1次元に射影してフィボナッチ格子を作る例題があげられます.この場合,直交空間も1次元なので幅が1の帯に入っているベクトルのみが1次元格子を形成します.射影する方向によって帯の傾きが変わり,無理数の傾きならフィボナッチ格子のような準周期構造に,有理数なら周期構造が得られます.
一般に高次元の射影理論は難しくて,境界条件の取り方でパターンが変わってしまい苦労しました.射影法とは別に自己相似法という方法もあります.ペンロースタイリングの場合は自己相似法でも作れて,1点から5本,4本,3本の格子点が現れます.(渡辺泰成)
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