■ケプラーと正多面体(その21)

ケプラーの宇宙論

 

 ケプラーは惑星運動の法則を発見した天文学者として有名ですが,超がつくほどのピタゴラス・プラトン主義者であり,世界は数学的な調和,幾何学的秩序に従っていると確信していました.彼の初期の著作「宇宙の神秘」では,太陽系の惑星の軌道を無数にある立体の中で明確な法則性をもっている立体(5種類の凸型正多面体)で幾何学的に説明しようとしていたことはよく知られています.

 

 また,「宇宙の神秘」から23年後の「世界の調和」の中で速く回転する天体ほど高い音を発し,その結果,天球全体が一つの音楽を奏ででいると考え,ピタゴラス音階による天球の音楽について一層詳細な論を展開しています.ケプラーの考えを非科学的なこじつけということはやさしく,今日から見れば,真理・正論ではないにしろ,正多面体やピタゴラス音階を宇宙論に導入したケプラーの美しい考え方<宇宙の調和論>には驚かされます.

 

 さらに,ケプラーは「新年の贈り物・六角形の雪の結晶について」のなかで,雪の結晶が正六角形をしているのはなぜかと考え,史上初めて菱形十二面体をみつけました.菱形十二面体(超正六角形)は2次元における正六角形に相当しますから,4次元における雪の結晶の形だと考えることができます.

 

 アーサー・ケストナー(物理学者で小説家)によると,人類史上,全宇宙を総合的に企画構成し世界を統一原理で理解しようとしたのは,プラトンとケプラーだけとのことですが,ケプラーは無意識のうちに4次元に近づいていたことになります.

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