■トーラスの展開図(その5)
【2】2次元多様体の分類定理(その2)
基本的な曲面(球面S,輪環面T,クラインの壷K,射影平面P)の組み合わせを標準形曲面と呼びます.ここでは標準形曲面S,nT(n≧1),mP(m≧1)を取り扱うことにします.SとnTは向き付け可能,mPは向き付け不可能ですから,Sだけが孤立していますが,Sを0Tと約束するとnT(n≧0)は向き付け可能な標準形曲面となり,好都合です.
また,クラインの壷Kは2つの射影平面の連結和2P=P#Pと同相です.T#PはK#Pと同相であり,したがって3Pとも同相になります.すなわち,クラインの壷Kは射影平面Pをつけることによってみかけ上そのねじれが解消され,トーラスTに射影平面Pがくっついた形になってしまうことは驚くべきことと考えられます.
したがって,nT,mPを扱えばよいことになるのですが,以下にコンパクトな曲面の分類定理をまとめておきます.
[1]向き付け可能なコンパクトな曲面はmT(m≧0)と同相である.ただし,0Tは球面Sを意味するものとする.
すなわち,なめらかに埋め込まれた閉曲面は球面Sか,m人乗りの浮き輪mTのいずれかに同相になります.このmは種数,このような曲面は種数mの閉曲面と呼ばれます.
これで閉曲面の位相的分類定理の半分です.残り半分は次のように表せます.
[2]向き付け不可能なコンパクトな曲面はmP(m≧1)と同相である.
なめらかに埋め込まれた閉曲面以外にも重要な閉曲面があります.クラインの壷Kが向き付け不可能な閉曲面の例です.クラインの壷は2重線のみをもつ閉曲面の例ですが,3重線をもつ閉曲面の例としてボーイの曲面があります.ボーイの曲面は射影平面Pと同相,クラインの壷Kは2Pと同相ですから,射影平面Pの方がより基本的なのです.
向き付け不可能のときは,m個のボーイの曲面を繋げたものに同相になるというのが,閉曲面の位相的分類定理の残り半分です.残り半分は次のように表Tのいずれかに同相になります.向き付け不可能の場合もmは種数,このような曲面は種数mの向き付け不可能閉曲面と呼ばれます.
[3]これ以外の向き付け不可能なコンパクトな曲面は,P#mT,K#mT(m≧0)のような向き付け不可能な曲面と同相である.P#mT,K#mTを第2標準形曲面と呼ぶ.
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