■太陽系のX個の惑星(その3)

【3】ボーデの法則

 1772年,ベルリン天文台長のボーデは惑星を太陽に近い順に0(水星),1(金星),2(地球),3(火星),・・・番と数えるとき,太陽から地球軌道の平均半径を1天文単位とすれば,第n番目(n≧1)の惑星の平均距離は(3×2^(n-1)+4)/10になるという,いわゆるボーデの法則を発見しました.

 この経験則は,1766年にドイツのティティウスが発見した関係を掘り出したもので,ティティウス・ボーデの法則とも呼ばれます.この法則は驚くべき正確さで太陽から惑星までの距離に対応していますが,理論的根拠があるわけでなく,全くの経験的法則であったため,あまり注意を払われませんでした.

 ところが,1781年,イギリスのハーシェルがボーデの法則のn=7,第7番目の位置に天王星をみつけたことから,俄然この法則は注目され,人々に受け入れられるようになりました.そして,n=4の空席,すなわち火星と木星の間にも未知の惑星があるのではという期待がもたれるようになり,天文学者たちは熱心に未発見の新惑星を探し求めました.

   太陽系のデータ

 惑星   平均距離(天文単位) 公転周期(年)

 水星     .387         .24

 金星     .723         .61

 地球    1            1   

 火星    1.524        1.88

 小惑星   2.721            

 木星    5.203       11.86

 土星    9.539       29.46

 天王星  19.183       84.04

 海王星  30.057      164.8 

 冥王星  39.530      248.6 

 この表は太陽から惑星までの実際の距離とボーデの法則によって予測された値を対比したものです.その後,海王星や冥王星といった惑星が発見されましたが,ボーデの法則が予測する値とは正確には一致していませんでした.

 惑星の距離に関するボーデの法則は,この系列の欠番の位置に新惑星が発見されたことから大騒ぎになりました.惑星の配置を表すボーデの法則と呼ばれる簡単な数列が太陽から惑星までの距離をほぼ正確に予測しているという事実は,太陽系の創生期に作用した必然的な構造原理なのでしょうか,それとも,単なる偶然の所産であって無意味なものなのでしょうか.海王星,冥王星にはよく当てはまらないことから法則そのものが疑わしいともいえますが,少なくとも惑星発見の指導原理として歴史的には大きな役割を果たした数秘術の例となっています.

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[補]天王星,海王星,冥王星は望遠鏡の発達に伴って,それぞれ1781年,1846年,1930年に発見されています.1820年頃,天王星の運動に不可解な偏差が観察されました.ニュートンの万有引力の理論から,天王星の運動の乱れは未知の惑星の引力によるものと予想されていましたが,一種の逆問題によって未知の惑星の質量と軌道が導かれました.天王星のずれから未知の惑星の位置を予測したのはフランスのルヴェリエとイギリスのアダムスです.その惑星は海王星と名付けられたが,海王星は当時の望遠鏡でやっと見えるほどであり,位置の予測がなければ発見することはできなかったと思われます.

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