■レギオモンタヌスの問題
【1】レギオモンタヌスの問題
1471年,ドイツの天文学者・数学者レギオモンタヌスは新たな問題を提起した.レギオモンタヌスの問題とは「空中に垂直に支えられた棒が,棒の延長線と地面との交点から水平に測って,どの地点で最大に見えるか」という問題である.近すぎる場合,棒はひどくつぶれて見えるだろうし,遠すぎる場合は単に小さく見えることになる.
最大視角を張る地点を求める問題であるから,交点から測った棒の上端をa,下端をb,水平方向の位置をxとして,三角法を使って解いてみよう.
tanθ=tan(α−β)
=(tanα−tanβ)/(1+tanαtanβ)
=(a/x−b/x)/(1+a/x・b/x)
=(a−b)x/(ab+x^2)
これを最大にするxは,微分によりx=√(ab)と計算され,求める点は棒の上部と下部の端点の高さの幾何平均の距離に位置することがわかる.
この解は,幾何学的には方ベキの定理(OA・OB=OP^2)によっているが,目の高さを考慮すると,この位置は棒の上端と下端を通る円が見ている人の眼の位置に水平に接するときの地点となる.円周角(同じ弧の上の角)を考えてみれば容易に理解できるであろう.
レギオモンタヌスの問題は,ラグビーでトライが決まったときに,どこからゴールを狙えばよいかなど,いろいろな場面で応用できる問題となっている.
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【2】役に立たない三角関数公式集
レギオモンタヌスの問題の証明では,正接の加法公式が用いられているが,正接のn倍角公式は,パスカルの三角形を用いて,次のように書くことができる.
tannα=(nC1tanα−nC3tan^3α+nC5tan^5α−・・・)/(nC0−nC2tan^2α+nC4tan^4α−・・・)
分母・分子の係数は,2項係数の符号が対で交代するパスカルの正接三角形
1
1 1
1 2 −1
1 3 −3 −1
1 4 −6 −4 1
1 5 −10 −10 5 1
の形に並べることができる.ほとんどの教科書から消えてしまったが,美しい公式である.
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