■ケプラーと正多面体(その11)
ケプラーは地動説をもとに惑星の運動法則を発見し,惑星の軌道が楕円であることを発見しました.姓ではなく名前のほうが良く知られているガリレオ・ガリレイは大砲の弾道が放物線になるなど,地上の物体の運動の研究で大きな仕事を成し遂げました.
ガリレオは非常に分析的な推論をを好み,法則を一般的考察から推測し,次にそれを実験で検証しましたが,理論(現象のモデル)が実験に先行したという意味で近代科学の先駆者といわれています.ケプラーはそういうタイプとは違って,以下に示すエピソードのように非常に想像力豊かなむしろ空想的な人であったようです.
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【1】ケプラーの多面体惑星系
凸型正多面体は正4・6・8・12・20面体の5種類あって5種類しかないことはプラトンの時代にはすでに見つけられていて,それらがプラトンの自然哲学で重要な役割を演ずるところから,正多面体はプラトンの立体(Platonic solid)とも呼ばれています.正多面体はピタゴラス学派には神秘的完全性の象徴のように見え,ギリシャの自然哲学者はこれらを5元素と対応させています.
ケプラーは惑星運動の法則を発見した天文学者として有名ですが,著名な数学者でもありました.ケプラーは「宇宙の神秘」(1596年),「新天文学」(1609年),「世界の調和」(1619年)という三部作を著していますが,非常にピタゴラスとプラトンびいきであって世界は数学的な調和,幾何学的秩序に従っていると確信し,彼の初期の著作「宇宙の神秘」では,太陽系の惑星の軌道を無数にある立体の中で明確な法則性をもっている立体(5種類の凸型正多面体)で幾何学的に説明しようとしていたことはよく知られています.
当時,惑星は水金地火木土の6つしかないといわれていて,水星から土星までの間に5カ所の隙間ができますが,惑星の軌道は5種類の正多面体を次々同一の中心をもつ6個の球面に外接させて得られる,すなわち,この隙間に5つしかないプラトンの正多面体をすっぽりと入れ込むことができると主張しました.
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【2】小括
宇宙はどんな形をしているのか? プラトンは宇宙が正12面体の形をしていて,残り4つの正多面体が火・空気・水・土という4つの元素に対応していると説明している.
1596年,ケプラーは「宇宙の神秘」を発表し,5つのプラトン立体と当時存在が知られていた6つの惑星軌道との関連例を追求した.彼の考えた多面体惑星系はロシアのマトリョーシカ人形のような構造をしていた.
もちろん,ケプラーの法則を発見する以前の話で,天王星,海王星,冥王星の存在を知らなかったのある.なお,ガリレオは20倍の天体望遠鏡を作成し,1610年に木星の4個の衛星と土星の輪を発見している.天王星,海王星,冥王星は望遠鏡の発達に伴って,それぞれ1781年,1846年,1930年に発見されている.
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