■フラクタル次元(その16)
フラクタルが登場するまで,図形の次元は1か2か3に限られていた.幾何学では分数次元を想像することも可能であるが,中でも有名なのは「コッホ雪片」である.コッホ雪片ではまず1辺の長さ1の正三角形を描く.それぞれの辺を3等分し,真ん中の部分を取り除く.そこに同じ長さの辺でできたV字型を置く.この操作を何回も繰り返すと,雪の結晶のような形になる.
周長は1回の操作ごとに1/3ずつ増えるので,n回後の長さは(4/3)^n→∞である.また,無限に繰り返した結果できるフラクタル図形の面積は
S=√3/4+√3/4・(1/3)^2・3+√3/4・(1/9)^2・3・4+√3/4・(1/27)^2・3・4・4+・・・=√3/4+√3/12/(1−4/9)=√3/4+3√3/20=2√3/5である.つまり,無限の周囲が有限の面積を囲んでいることになる.
[参]アン・ルーニー「数学は歴史をどう変えてきたか」東京書籍
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【1】コッホ曲線
コッホ曲線では1回の操作ごとに全体の長さは1/3ずつ増えるので,n回後の長さは(4/3)^nである.この曲線は1次元の線ではない.また,同時に2次元でもない.そこで,このような曲線はフラクタル次元をもつといわれ,その次元は
log4/log3=1.26
で,線の次元よりは上だが,面の次元よりは下になる.
方眼紙を1枚もってきてこの図形にかぶせ,この図形を覆っているマス目の個数を数える.つぎにマス目の大きさを半分にした方眼紙で同じことを繰り返す.もとの図形が線であればマス目の数は2=2^1倍に,面であればマス目の数は4=2^2倍に増える.
コッホ曲線では,マス目の大きさを1/3にした方眼紙で同じことを繰り返すと画素数は4倍になるから,
3^d=4→d=log4/log3=1.26
マス目の大きさを半分にした方眼紙であれば,2^1.26倍に増えるのである.
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コッホ雪片では1/3の長さの線分4つに置き換える
次の段階では1/9の長さの線分16に置き換えることになる
そのフラクタル次元は
log4/log3=1.2618
log16/log9=1.2618
自己相似の性質がよくわかるだろう
一般に、1/rの長さの線分Nに置き換えた場合のフラクタル次元は
d=logN/logr
1/4の長さの線分8つに置き換える場合は
d=log8/log4=3/2
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カントル集合のような自己相似集合のハウスドルフ次元は特にを算するが簡単である。
直線に対してはd=1
カントル集合に対してはd=log2/log3=0.6309
1/√7の長さの線分3つに置き換えた場合のハウスドルフ次元はd=log3/log√7=1.129159
2次元図形の場合、周囲比が3倍だと面積比は3^2=9倍になるが、
d=log3/log√7=1.129159の場合、周囲比が3倍だと面積比は7倍だけである。
面積比7倍だと、面積は次元2を持つから次元1に直すと7^1/2=2.64575
次元1に直すと周囲比3倍は面積比は3^1/d==2.645753と全く同じ数字になる、
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7つの六角形は、平面を充填するが、正方形によるタイル貼りと違って、再び六角形を作ることはできない。
しかし、フラクタル図形の場合は相似な図形が現れるのである
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