■ルーローの三角形が直線上を転がるときの中心の軌跡(その9)
正三角形の3つの頂点を中心にして正三角形の1辺の長さを半径とする円を描くと,正三角形に少し丸みをつけた図形ができる.これがルーローの三角形である.ルーローの三角形はどの方向の幅も最初の正三角形の1辺の長さとなる.いかなる方向に対しても等しい幅をもっている図形を「定幅図形」と呼ぶ.
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【1】直線上を転がるときの中心の軌跡
円が直線上を回転するとき,円の中心が描く軌跡は定直線に平行な直線となります.円を正方形に置き換えてみると,頂点が回転軸となりますから,正方形の中心は中心角π/2の円弧を連ねた波型曲線を描きます.正三角形の場合,その中心(重心)は中心角2π/3の円弧をつないだ曲線になります.一般に,正n角形の場合,中心角2π/nの円弧をつないだ曲線となるのですが,円の場合は正n角形のn→∞のときの極限として,平行線を描くというわけです.
また,固定した直線上を円が滑らずに転がるとき,回転円の周上の固定点のなす軌跡はサイクロイドと呼ばれます.最初の定点の位置を原点にとり,回転角を媒介変数として回転円の半径をaとすると
x=a(θ−sinθ),y=a(1−cosθ)
と書くことができます.この曲線は2変数多項式f(x,y)=0の形に表せませんから代数曲線でありません.
円の内側にある固定点が描く軌跡をトロコイドというのですが,
x=aθ−bsinθ,y=a−bcosθ (a>b>0)
で表されます.bは円の中心から固定点までの距離で,このときyはa−b≦y≦a+bの範囲を動きます.また,サイクロイドもトロコイドもθ=2π,x=2πaを周期とする曲線であることがわかります.
dx/dθ=a−bcosθ=y,dy/dθ=bsinθ
d^2x/dθ^2=bsinθ,d^2y/dθ^2=bcosθ
d^3x/dθ^3=bcosθ,d^3y/dθ^3=−bsinθ
より,
dy/dx=bsinθ/(a−bcosθ)
d^2y/dx^2=cotθ
d^3y/dx^3=−tanθ
それではルーローの三角形の中心が描く軌跡はどうなるかというと,トロコイドと中心角π/3の円弧を区分的に接続した曲線となります.その理由はルーローの三角形には3つの角があり,そこを接点として転がるときは接線同士のなす内角は2π/3ですから中心角π/3の円弧となり,一方,円周上の1点を接点として転がるときはトロコイドになるからです.
ルーローの三角形の場合,b=a/√3です.また,角から中心までの距離をc(=b=a/√3)とおき,トロコイドの最下点y=a−bの位置をx=0にとると,円弧部分は
x=πa/6+csinφ (−π/6≦φ≦π/6)
y=ccosφ
と表すことができます.
dx/dφ=ccosφ,dy/dφ=−csinφ
d^2x/dφ^2=−csinφ,d^2y/dφ^2=−ccosφ
d^3x/dφ^3=−ccosφ,d^3y/dφ^3=csinφ
より
dy/dx=−tanφ
d^2y/dx^2=cotφ
d^3y/dx^3=−tanφ
両者が接続する点ではφ=−π/6ですから,円弧に関して
dy/dx=−tanφ=1/√3
d^2y/dx^2=cotφ=−√3
d^3y/dx^3=−tanφ=1/√3
トロコイドに関しては,円弧と連続することより
y=a−bcosθ=c√3/2
より,
cosθ=√3/2,sinθ=1/2
dy/dx=bsinθ/(a−bcosθ)=1/√3
d^2y/dx^2=−cotθ=−√3
d^3y/dx^3=−tanθ=−1/√3
となって,yもy’もy”も一致するするように接続することがわかります.しかし,y^(3)は一致していないようです.
以上のことから,ルーローの三角形が直線上を転がるときの中心の軌跡はトロコイドの最高点a+bを円弧の最高点cまで押しつぶしたような形であって,a−b≦y≦c,すなわち,
(1−1/√3)a≦y≦a/√3
の範囲を動くことになります.
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アニメができたので掲げます。
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