■形の学校・空間充填多面体(その3)

ロシアの結晶学者フェドロフは,3次元空間において,平行移動だけで決まる本質的なボロノイ領域は,たった5種類しかないという構築原理発見した(1885年).この5種類のボロノイ領域とは,立方体,6角柱,菱形12面体,長菱形12面体,切頂8面体であって,「平行多面体」と総称される.

すなわち,平行多面体とは平行移動するだけで3次元空間を埋めつくすことのできる単独の多面体であって,230種類ある結晶もたった5種類のウィグナー・ザイツセルで概構成することができるのである.これら5種類の図形は5種類の正多面体(プラトン立体)ほどよく知られていないが,自然界のレゴ・ブロックと考えられる所以である.

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フェドロフの平行多面体とは平行移動するだけで3次元空間を埋めつくすことのできる単独の多面体であって,平行辺(したがって平行四辺形面,平行六辺形面に限られる),平行面から構成されている多面体である.フェドロフの平行多面体には立方体,6角柱,菱形12面体,長菱形12面体,切頂8面体の5種類しかないことが証明されている(1885年).

立方体は単独で空間全体を格子状に埋めつくすことができる.単純立方格子状配置,すなわち角砂糖の箱の封を切ったときに見えるパターンについてはこれ以上説明するまでもないだろう.立方体以外の単一多面体による空間充填体としては,菱形十二面体や切頂八面体がよく知られている.両者はしばしば対比され,どちらも単独で空間充填可能な立体図形であるが,菱形十二面体が面心立方格子のボロノイ図であるのに対して,切頂八面体は体心立方格子のボロノイ図となっている.

平行多面体は結晶(金属結晶や鉱物結晶)でよくみられる構造である.菱形12面体はザクロ石(ガーネット)にもみられる.立方体は単純立方格子のボロノイ領域で,平行六面体は方解石にみられる.六角柱はコランダム(ルビー・サファイア),歯のエナメル質などにみられるが,長菱形12面体はあまりみられないから平行多面体の異端児である.

これら5種類の図形は3次元格子の幾何学的分類であり,5種類の正多面体(プラトン立体)ほどよく知られていないが,少なくとも同じ程度に重要であるし,結晶学の観点からすると平行多面体は正多面体以上に重要である。とりわけ原始的平行多面体である切頂八面体による空間充填は・・・

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