■正多角形の環・正多面体の環(その3)

【1】結晶と準結晶

 互いに合同な正三角形,正方形,正六角形は,平面をタイル貼りのように隙間なく埋め尽くすことができる.このうち正方形は碁盤,正六角形は蜂の巣などでおなじみであろう.しかし,七角以上になるとどんな正n角形でも平面充填はうまくいかなくなる.共通の頂点に集まる内角の和が360°にならないからだ.

 それでは正五角形の場合はどうなるのか,平面上で正五角形を連結させてみよう.正五角形を10枚丸く並べるとちょうどひとつの輪になり,正10角形の隙間が残る(デューラー・パターン).

 また,正五角形を5枚を星形5角形の隙間が残るように並べることもできる(ケプラー・パターン).

 正10角形の隙間に可能な限り正五角形を詰め込むと,菱形や星形5角形の隙間が残る非周期的な平面充填ができあがる(ペンローズ・パターン).

 ともあれ平面上で正五角形を配列させるとどうしても隙間を生ずるのである.

 要素を配置するときの規則によって周期的配置(結晶),乱雑配置,準結晶的配置の3種類に分類される.準結晶とは厳密な規則によって配列が一意に決定されるが,周期的ではない配置である.ここでは,1種類のブロックを「平行移動」させて空間を隙間なく埋め尽くすことができるものを「結晶」,隙間を残しながら配列させることのできるものを「準結晶」と呼ぶことにする(実はこれにはボロノイ細胞,ディリクレ細胞,ブルユアン帯,ウィグナー・ザイツ細胞,ティーセン図形など研究分野によりいろいろな呼び名が使われているため,ここでは結晶を用いることにした).正三角形は平面充填形であるが回転が必要となるので結晶ではない.結晶の定義に合致するのは正方形,正六角形に限られ,正五角形は準結晶ということになる.

 平行多面体を空間結晶と定義するが,空間結晶には本質的に立方体,6角柱,菱形12面体,長菱形12面体,切頂8面体の5種類しかないことが証明されている(フェドロフの平行多面体,1885年).立方体や菱形12面体は結晶であるが,正12面体や菱形30面体は準結晶である.

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【2】隙間の占める割合

 正五角形の各辺に同大の正五角形を敷くと,その間に隙間が残り敷石というわけにはいかない.しかし,この回りの5個の正五角形は一回り大きな正五角形に内接していることがわかる.

 正五角形の辺の長さをa,一回り大きな正五角形の辺の長さは

  (φ+1)a=φ^2a

となる.すると隙間の占める面積は

  1−6/φ^4=0.124

すなわち,12%程の割合である.

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