■東京オリンピックのエンブレム(その9)
[参]五輪教一・山崎憲久「街角の数学」日本評論社
のまえがきに街角の数学の1例として東京五輪のエンブレム制作者・野老朝雄氏の記事が掲載されていた. 3種類の菱形の辺の中点を結ぶ長方形を考えれば東京五輪のエンブレムになるが,60個の菱形を並べるやり方は何億通り以上あるとのことであった.
それで思い出したのが2012年に書いたコラム「3種類の菱形による非周期的平面充填」である.
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1974年にイギリスの数理物理学者ペンローズの発見した2種類の菱形を組み合わせて平面を非周期的に敷きつめるものが最も構成要素の少ないものです.
凧と矢を用いたペンローズの非周期的タイル貼りは5回回転対称が現れる.凧と矢よりも2種類の菱形(72°−108°,36°−144°)で代替した方がわかりやすいが,パターン全体にわたって正十角形が現れるのである.すべての正十角形は同じ方向を向いていて,長距離配向秩序を示している.
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【1】3種類の菱形による非周期的平面充填
2種類の菱形は(2π/5−3π/5,π/5−4π/5)は正十角形の中心角π/5から導かれたものである.もし7回回転対称にしたければ正十四角形の中心角π/7から導かれた3種類の菱形(π/7−6π/7,2π/7−5π/7,3π/7−4π/7)を使うとよいことがわかる.
パターン全体にわたって正十四角形が現れるのである.すべての正十角形は同じ方向を向いていて,長距離配向秩序を示すことになり,ペンローズ・タイル貼りに見た目がよく似たものができる.
もちろん,8回回転対称,9回回転対称,さらに高次のペンローズ・タイル貼りも同様の方法で作ることができる.また,ペンロ^ズ・タイルの3次元版が黄金菱形6面体による,非周期的空間充填である.
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