■高次元の準正多面体(その31)
これまで高次元の空間充填の問題は,通信理論などの応用されてきた.とくに,8次元や24次元の最密球充填は携帯電話などを介して,現代の生活を担保するまでになっている.
しかし,その多面体版(空間充填多面体・結晶)はというと,あきれるほど何もわかっていない.そこで,ワイソフ多胞体の遺伝子を応用すると,任意のn次元空間に4種類の結晶を構成できることがわかった.以下に,それらの簡単な特徴を記す.
===================================
[1]ミンコフスキー結晶
原始的平行多面体,あるいは,多面体的組み合わせ論では置換多面体とも呼ばれる.ここではミンコフスキー結晶と呼ぶことにするが,頂点数(n+1)!,ファセット数2(2^n−1)の結晶である.すなわち,2次元では6角形,3次元では切頂八面体,4次元では30胞体,5次元では62胞体となる.
ひとつの頂点のまわりにn+1個の同じ多面体のコピーが集まるので,力学的に最も安定な形となる.
===================================
3次元の代表的な結晶といえば,BCC,FCC,HCP結晶である.これらの結晶は高次元でも構成することができる.
[2]BCC結晶
超立方体を切頂してできるのが,BCC結晶である.そのファセット数は2^n+2nになるが,3次元では切頂八面体となり[1]と一致,4次元では24胞体(正24胞体),5次元では42胞体となる.ただし,2次元では8角形ではなく4角形となる.
[3]FCC結晶
超立方体を切頂するのではなく,逆に,ファセットを盛り上げることによって構成する.これは超立方体を切頂してできる多面体の双対となる.3次元では菱形12面体となる.4次元ではボロノイ細胞とドローネー細胞が一致するため,BCC=FCC(正24胞体)となる.
[4]HCP結晶
3次元では立方八面体の北半球(あるいは南半球)を60°回転させたものがHCP結晶であるが,4次元以上ではそのような操作をしなくてもFCC結晶とは別物になる.ただし,定まった呼び名がないので,HCP結晶と呼ぶことにする.[3]とともに二胞角が120°の結晶となる.
===================================