■高次元の正多面体(その15)
【2】高次元の正多胞体
n次元空間の正多胞体とは「n個の超平面に囲まれ,全体の中心onから各頂点o0,各辺の中点o1,各面の中心o2,・・・,各超辺の中心on-2,各超平面の中心on-1までの距離がそれぞれ相等しく,そのm次元成分はすべてm次元の正多胞体である」と定義されます.
2次元の正多角形はその辺数pで,3次元の正多面体は面の辺数pと各頂点に会する面の個数qをペアにしたシュレーフリ記号(p,q)で表されます.それと同様に,n次元正多胞体ではシュレーフリ記号を一般化して,n−1次元超平面(p1,p2,・・・,pn-2)が3次元低い構成要素上にpn-1個ずつ会する,
(p1,p2,・・・,pn-2,pn-1)
で表現されます.
たとえば,
n次元正単体は(3,3,・・・,3,3),
双対立方体は(3,3,・・・,3,4),
超立方体は(4,3,・・・,3,3)
と表されます.これを逆順にした(pn-1,pn-2,・・・,p1)で表される正多胞体が双対正多胞体です.
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また,onon-1・・・o1o0を結んだn次元単体を基本単体と呼びます.o0o1,o1o2,・・・,on-1onは互いに直交するので,n次元正多胞体の諸量を計算するための基本となっています.
基本単体の個数gは正多胞体にとって最も大切な基本量です.基本単体は隣同士が鏡像形であり,半分ずつが互いに合同であることより,3次元正多面体の基本単体の個数は
g=2pf=2qv=4e
すなわち,正多面体の辺の個数eの4倍と等しくなります.
また,(n+1)次元空間内の正多胞体はn次元球面上に射影することによって球面充填形になるのですが,そのような方法によって,3次元正多面体の基本単体の個数を(p,q)を用いて表すと
g=4π/π(1/p+1/q−1/2)=8pq/{4−(p−2)(q−2)}
さらに,
g/h=(h+2)=24/(10−p−q)
なる関係を掲げますが,ここでhはペトリー数と呼ばれるもので,反転が何回でもとに戻るかという群論(鏡像変換)に関係した基本量です.4次元正多胞体の場合は
g/h=64/(12−p−2q−r+4/p+q/4)
で表されます.
ところで,正n角形にはn本の対称軸があります.そこで,正多面体の対称面の個数は? n次元の正多胞体に対称超平面は合計何枚あるのか? という問題が派生します.答を先にいうと,この解はnを次元数,hをペトリー数として
m=nh/2
枚で与えられます.
正多角形の対称軸の数m=2n/2において,分子の2は平面の次元数と解釈できます.また,3次元正多面体の対称面はm=3h/2個ですが,3は次元数です.
次元 対称面数m ペトリー数h 基本単体数g
2 正p角形 p p 2p
3 (3,3) 6 4 24
3 (4,3) 9 6 48
3 (3,4) 9 6 48
3 (5,3) 15 10 120
3 (3,5) 15 10 120
4 (3,3,3) 10 5 120
4 (3,3,4) 16 8 384
4 (4,3,3) 16 8 384
4 (3,4,3) 24 12 1152
4 (3,3,5) 60 30 14400
4 (5,3,3) 60 30 14400
n 正単体 n(n+1)/2 n+1
n 双対立方体 n^2 2n
n 超立方体 n^2 2n
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基本単体は万華鏡のように隣同士が互いに鏡像形で,半分ずつが互いに合同です.そして,{o0o1・・・on-2}上on-1,onのなす角
∠on-1on-2on=π/pn-1
は超平面同士が超辺上でなす二面角δの半分です(注:二胞角というべきですが3次元の場合の用語を転用します).
二面角が重要なのはn+1次元正多胞体(p1,p2,・・・,pn)が存在するための必要条件が
δpn<2π
で表されるからです.これは3次元正多面体の場合,1点のまわりの角錐の角の和が4直角未満という条件の一般化にあたります.
超立方体の二面角はつねに90°ですが,正単体の2面角は,頂点(x,x,・・・,x),底面の中心on-1(1/n,・・・・,1/n),1つの超辺の中心on-2(0,1/(n−1),・・・,1/(n−1))の関係から
cosδ=1/n
双対立方体の2面角は,たとえば,頂点(±1,0,・・・,0)と赤道面の1つの超辺の中心on-2(0,1/(n−1),・・・,1/(n−1))より,
cosδ=−(n−2)/n
と計算されます.
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3次元と同様の方法によって,4次元の空間における正則胞体の必要条件を定めることができます.(p,q,r)すなわち合同な正多面体(p,q)の各面が2つの(p,q)に属し,各辺がr個の(p,q)に属すとしましょう.
3次元正多面体(p,q)を各辺のまわりにr個集めてできる4次元正多胞体の必要条件は,2面角のr倍が4直角未満ですから,正4面体(3,3)の2面角は71°より少し小さいので,1本の辺に3,4,5個の正4面体を置くことができます→(3,3,3),(3,3,4),(3,3,5).
立方体(4,3)の2面角は直角ですから,1本の辺のまわりに4個の立方体で隙間なく空間を充填します.しかし,(4,3,4)では無限の多面体になってしまいますから,超立方体(4,3,3)は有限胞体になります.
正8面体と正12面体の2面角は,90°と120°の間にあるので,1辺の周囲には3個の正多面体が置けます→(3,4,3),(5,3,3).正20面体の2面角は120°より大きいので,このようなことはできません.
すなわち,正4面体に対してはr=2,3,4.正6,8,12面体に対してはr=3.正20面体では許されないので,結局,正多胞体の可能性としては(3,3,3),(3,3,4),(3,3,5),(4,3,3),(3,4,3),(5,3,3)しかあり得ないことがわかります.
そして,実際にこの6通りの正多胞体が構成できます.なお(4,3,4)は角の和がちょうど4直角となるので,3次元空間充填形です.
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これらを一般的な条件式として表すならば,正多面体(p,q)の2面角は,
2sin^(-1)(cos(π/q)/sin(π/p))
このような角r個の和が2πより小さくなくてはならないことから,
cos(π/q)<sin(π/p)sin(π/r)
cos(π/q)<sin(π/p)sin(π/r)≦sin(π/p)
すなわち,
sin(π/2−π/q)<sin(π/p)
より,
1/p+1/q>1/2 (p,q≧3)
同様に,
1/q+1/r>1/2 (q,r≧3)
が導かれます.
以上の必要条件をまとめると
1/p+1/q>1/2 (p,q≧3)
1/q+1/r>1/2 (q,r≧3)
となります.
なお,3次元空間充填であるためには,等式
cos(π/q)=sin(π/p)sin(π/r)
が成り立たなくてはならないので,3以上の整数解は立方体による空間充填(4,3,4)だけということになります.
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