■高次元の正多面体(その13)

【2】双対性とルート系

 

 3次元には5つの正多面体(プラトン立体)がある.リストアップすると,正4面体,立方体,正8面体,正12面体,正20面体である.正4面体はそれ自身と双対であり,立方体は正8面体と,正12面体は正20面体と双対である.

 

4次元空間の正多胞体

      境界多面体  頂点数  双対性         3次元対応

5胞体   正4面体     5  自己双対(非中心対称) 正4面体

8胞体   立方体     16  16胞体と双対     立方体

16胞体  正4面体     8   8胞体と双対     正8面体

24胞体  正8面体    24  自己双対(中心対称)

120胞体 正12面体  600  600胞体と双対    正12面体

600胞体 正4面体   120  120胞体と双対    正20面体

 

 4次元には6種類の正多胞体がある.正8胞体(4次元立方体)のほか,

  正5胞体(4次元正4面体:自己双対)

  正16胞体(4次元正8面体)

  正24胞体(相当する正多面体はない:自己双対)

  正120胞体(4次元正12面体)

  正600胞体(4次元正20面体)

である.正8胞体と正16胞体,正120胞体と正600胞体は互いに双対,正5胞体と正24胞体はそれぞれ自分自身に双対である.

 

n次元空間の正多胞体(n≧5)

        境界胞体    頂点   双対性  対応

(n+1)胞  n胞体     n+1  自己双対 正4面体・5胞体

2n胞体  (2n−2)胞体  2^n   2^n胞体 立方体・8胞体

2^n胞体    n胞体     2n   2n胞体 正8面体・16胞体

 

 双対性からみて,正4面体,正6面体,正8面体の多次元への拡張はわかりやすいと思われるが,3次元空間の正12面体,正20面体,4次元空間の24胞体,120胞体,600胞体は,より高次元においては対応するものをもたない.しかし,それよりも,三次元の場合はこれらの他に2つの正多面体<正十二面体と正二十面体>があり,四次元の場合は他に3つ<正24胞体,正120胞体,正600胞体>あるといったほうがわかりやすいだろう.

 

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 ここで最も気になるのが正24胞体である.正24胞体に相当する3次元正多面体はない.なぜかというと,正24胞体は自己双対かつ中心対称であり,3次元空間でそれに対応する正多面体はないからである.

 

 すなわち,正24胞体(24胞,正3角形のみからなる96面,96辺,24頂点)こそが,四次元特有の物体であると考えられるのであるが,正24胞体は,四次元空間で三次元空間の立方体にあたる正八胞体(8胞,24面,32辺,16頂点)と正八面体にあたる正十六胞体(16胞,32面,24辺,8頂点)を重ねてできることから,その意味で4次元版の菱形十二面体に相当する.

 

 24胞体は,すべての次元を通じて,単体以外の唯一の自己双対な正則胞体であって,例外中の例外といってもよいものであろう.この24胞体の対称性を,鏡映で生成される既約な有限群(ルート系)との関係でみても興味深いものがある.

 

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