■高次元の正多面体(その12)
【1】4次元の壁
上の例からして,小生はどうも多胞体の複雑さを理解していないと思われるのだが,正則胞体に限ってみても,4次元となった途端,物事はいかにも複雑になる.
4次元多胞体では,頂点,辺,面,胞の個数の間に,シュレーフリの公式:
v−e+f−c=0
が成立する.これを高次元へ一般化したものがオイラー・ポアンカレの定理
f0=v,f1=e,f2=f,f3=c,・・・
であるが,4次元空間においては,点vは空間cと直線eは平面fと双対的に対応する.正多胞体の頂点数,辺数,面数,胞数を掲げる.
頂点数 辺数 面数 胞数
5胞体 5 10 10 5
8胞体 16 32 24 16
16胞体 8 24 32 8
24胞体 24 96 96 24
120胞体 600 1200 720 120
600胞体 120 720 1200 600
次の表で(p,q)の組合せを調べると,それぞれ5個の4面体がf3,8個の立方体がf316個の4面体がf3,24個の8面体がf3,120個の12面体がf3,600個の4面体がf3である正多胞体であることを示している.
境界多面体 境界面p 頂点に集まる面q 辺に集まる胞r
5胞体 正4面体 3 3 3
8胞体 立方体 4 3 3
16胞体 正4面体 3 3 4
24胞体 正8面体 3 4 3
120胞体 正12面体 5 3 3
600胞体 正4面体 3 3 5
また,この2つの表では,それぞれの詳細について,たとえば,正600胞体(4次元正20面体)は頂点数120,稜数720,正三角形数1200で,600個の正4面体状胞体が各辺のまわりにr=5個ずつ集まっているという状況にあることがわかる.
このことをすべての正多胞体について記すのはやめておくが,言葉で説明する(あるいはこれを描く)のは易しいが,これを理解するのがいかに難しいかわかるだろう.
端的にいって,人間の直観や勘が働くのはたがだか3次元空間までで,次元が大きくなるに従い,格子点の配位は非常に複雑となり,われわれが3次元空間でイメージするものとは大きく異なってくる.すなわち,高次元では幾何学的直観が効かないので,多胞体は理解するのが難しい対象ということなのである.
また,高次元では用語の問題も出てくるので注意が必要である.例えば,以下のような表現はどうなっているのだろう.
「五次元以上のd次元の場合は,2d個の頂点と2^d個の辺をもつ双対立方体(三次元では正八面体),2^d個の頂点と2d個の辺をもつ立方体,d+1個の頂点とd+1個の辺をもつ正単体(三次元では正四面体)の3つですべての正多面体をつくしています.」
この場合,頂点は0次元面f0のことを指す用語であるから問題はないのであるが,辺というのは1次元面f1のことではなく,d−1次元面fd-1のことを指していることがおわかり頂けるであろうか?
また,2次元面f2ではなく,d−1次元面fd-1のことを面と表現しているものもあるし,辺と稜を区別して,辺(edge)を1次元面f1,稜(ridge)をd−2次元面fd-2と定義しているものもあるのでますます注意が必要である.
===================================