■高次元の正多面体(その6)

【5】オイラーの定理の応用

 

 正多面体は正4・6・8・12・20面体の5種類しかないことの証明は,いろいろと知られているのですが,次のような計量的なものが一番わかりやすいと思います.

(証明)

 正多面体の各面を正p角形,各頂点にq面が会するとすると,頂点の周囲は4直角未満ですから,不等式

  2q(1−2/p)<4,すなわち,

  1/p+1/q>1/2   (p,q≧3)

  (p−2)(q−2)<4

が正多角形となる必要条件です.このような整数の組は(p,q)=(3,3),(3,4),(3,5),(4,3),(5,3)の5通りで,それぞれ,正4面体,正8面体,正20面体,正6面体,正12面体に対応します.

 

 すなわち,正多面体は正4・6・8・12・20面体の5種類あって5種類しかないことはプラトンの時代にはすでに見つけられていて,それらがプラトンの自然哲学で重要な役割を演ずるところから,正多面体はプラトンの立体(Platonic solod)とも呼ばれています.

 

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 ここで与えた証明は,すべての側面が正多角形であることを仮定していますが,オイラーの多面体定理を利用すると,

  1)どの面も同数の辺で囲まれている.

  2)どの頂点にも同数の辺が集まっている.

という仮定をするだけで,正多角形であるという仮定をまったくせずとも証明可能になります(位相幾何学的証明).

 

(証明)

 多面体の頂点,辺,面の数をそれぞれv,e,fとすると,

  pf=2e,qv=2e   (握手定理)

が成り立ちます.さらに,

  v+f=e+2   (オイラーの多面体定理)

が成り立ちますから,

  v=4p/(2p+2q−pq),

  e=2pq/(2p+2q−pq),

  f=4q/(2p+2q−pq)

となります.

 

 2p+2q−pq>0はpとqについて対称な式ですから,たとえば,p≧q≧3とすると,4≧2(1+q/p)>q≧3より,pとqの小さい方は必ず3,そこでq=3とするとp<6より大きい方は5以下であることがわかります.

 

 あるいは,同じことですが

  1/e=1/p+1/q−1/2

において,p,q≧3ですから,pもqも3より大きいとすると,

  1/e=1/p+1/q−1/2≦1/4+1/4−1/2=0

これは不可能です.そこでq=3とおいてみると,

  1/e=1/p−1/6

したがって,p=3に対してはq=3,4,5の3つの値しかとり得ません.

 

 この式はpとqに関して対称ですから,q=3に対してもp=3,4,5.

p=3かつq=3の場合は一致していますから,5通りの可能な場合が得られたことになります.

 

       境界面p 1頂点に集まる境界面q 頂点v 辺e 面f

正4面体   正3角形     3        4   6  4

立方体    正方形      3        8  12  6

正8面体   正3角形     4        6  12  8

正12面体  正5角形     3       20  30 12

正20面体  正3角形     5       12  30 20

 

  v−e+f=2   (オイラーの多面体定理)

より,3次元空間では頂点vと面fが双対的に対応しているのがわかります.

 

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