■18世紀における微積分(その55)

 三角関数の有理関数の積分はt=tan(θ/2)とおくと有理関数の積分に帰着できることはほとんどの教科書に書かれている.数学の学習では「この場合にはこうする」といった技法を習うが「なぜそうすればうまくいくのか」といった基本原理にまでは言及されていないのが普通である.もう1歩掘り下げると次の事実がある.   (一松信「基本原理を理解すること」より抜粋改編)

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【1】2次曲線のパラメータ表示例

 原点を中心とする半径1の円の円周上の点を(x,y)とすれば,第3の変数θを媒介として,x=cosθ,y=sinθと表されます.θは(x,y)と(0,0),θ/2は(x,y)と(−1,0)を結ぶ直線とx軸とのなす角を表しています.

 さらにt=tan(θ/2)とすると

  tan(θ/2)=sinθ/(1+cosθ)=(1−cosθ)/sinθ,

  cosθ=(1−t^2)/(1+t^2),

  sinθ=2t/(1+t^2),

  dθ/dt=2/(1+t^2)

より,

  x=±(1−t^2)/(1+t^2),

  y=(2t)/(1+t^2)   (−1≦t≦1)

と表すことができます.

 単位円上のすべての有理点(座標x,yが有理数であるような点)は,x=±(1−t^2)/(1+t^2),y=(2t)/(1+t^2)とx=−1,y=0です.

 このように,円の有理点全体は1つの変数tによって一意化できますが,円ばかりではなく,現在では2次曲線に1つでも有理点があると実は無限に有理点があることがわかっています.2次曲線は有理点を無限のもつか,1つももたないかのどちらかです.実際,t=m/nを代入して展開すると,

  x=±(m^2−n^2)/(m^2+n^2),

  y=2mn/(m^2+n^2)

となります.

 したがって,ピタゴラス数(a^2+b^2=c^2:a,b,cは整数)の組み合わせは,a=m^2−n^2,b=2mn,c=m^2+n^2によって,すべて導き出せることがおわかり頂けることでしょう.

 なお,三角関数の有理関数の積分はt=tan(θ/2)とおくと有理関数の積分に帰着できることはほとんどの教科書に書かれていますが,うまくtanθ,cos^2θ,sin^2θだけの関数に書き表すことができる場合には,tanθ=tとおくことによって三角関数の有理関数の積分計算は格段と簡単になります.この場合,cos^2θ=1/(1+t^2),sin^2θ=t^2/(1+t^2)となりますから,tan(θ/2)=tとおいた場合に比べ,次数が約半分の有理関数になります.

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