■18世紀における微積分(その51)

 三角関数の有理関数の積分はt=tan(θ/2)とおくと有理関数の積分に帰着できることはほとんどの教科書に書かれている.数学の学習では「この場合にはこうする」といった技法を習うが「なぜそうすればうまくいくのか」といった基本原理にまでは言及されていないのが普通である.もう1歩掘り下げると次の事実がある.   (一松信「基本原理を理解すること」より抜粋改編)

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  ∫√(x^2+1)dx

 これはなぜ,t=√(x^2+1)ではなく,t=x+√(x^2+1)と変数変換すべきか,その根拠を説明している.「t=x+√(x^2+1)とせよ」というのを天下り的に覚えるか、幾何学的な考察をするかで、数学の世界がかわってくるということである.

 天下り式にy=√(x^2+1),t=x+√(x^2+1)とすると

  x=(t−1/t)/2,y=(t+1/t)/2,

  dx/dt=(t^2+1)/2t^2

  ∫1/√(x^2+1)dx=∫(t^2+1)/(t^3+t)dt

 =∫1/tdt

 =log|t|+C

 =log(x+√(x^2+1))+C

 この計算結果は log(x+√(x^2+1) となり,√(x^2+1)dxより計算が楽である.

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 一方,t=x+√(x^2+1)ではなく,y=√(x^2+1)として

  ∫√(x^2+1)dx=∫ydx

を求めてみよう.

  dy/dx=x/√(x^2+1)=x/y,xdx=ydy

  ∫ydx=∫y^2/xdy=∫y^2/√(y^2-1)dy

となって簡単にはならない.

 次に,∫dx/√(x^2+1)=log(x+√(x^2+1)+Cがあらかじめ求まっているとき,

  ∫√(x^2+1)dxは?

を考えてみる.

  √(x^2+1)=(x^2+1)/√(x^2+1)=x^2/√(x^2+1)+1/√(x^2+1)

  x^2/√(x^2+1)=(y^2-1)/y

  x/√(x^2+1)=√(y^2-1)/y

  dy/dx=x/√(x^2+1)=x/y,xdx=ydy

  ∫x^2/√(x^2+1)dx=∫(y^2-1)dy/x=∫xdy

となって,∫ydxが∫xdyに変わるだけである.

  ∫√(x^2+1)dx=1/2{x√(x^2+1)+log(x+√(x^2+1))}+C

であるから

  √(x^2+1)=(x^2+1)/√(x^2+1)=(x^2+1/2)/√(x^2+1)+1/2・1/√(x^2+1)=1/2・(2x^2+1)/√(x^2+1)+1/2・1/√(x^2+1)

としてみるが,その原始関数

  {x√(x^2+1)}’=(2x^2+1)/√(x^2+1)

には気づかないと思う.

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