■ラマヌジャンのτとΔ(その5)

Ik=∫(0,∞)x^kdx/(exp(2πx)−1)

=∫(0,∞)x^k(Πexp(−2πnx))dx

=Σ1/(2πn)^k+1∫(0,∞)y^kexp(−y)dy

=ζ(k+1)Γ(k+1)/(2π)^k+1

=Bk+1/2(k+1)

が成り立ちます.

 これを離散化するとさらにおもしろくなります.

Sk=Σ(1,∞)n^k/(exp(2πn)−1)

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 ラマヌジャンは

  Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504

  Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π

  Σn^3/{exp(2πn)-1}=1/80(ω/π)^4-1/240

  Σ1/n{exp(2πn)-1}=-π/12-1/2log(ω/√2π)

も証明している.

 I1=1/24に対してS1=1/24-1/8πである.有名なラマヌジャンの等式であるが,不思議なことにk4m+1≧5のときはSk=Ikとなる.

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 ここで,πとωはそれぞれ,

  π=2∫(0,1)1/√(1-x^2)dx=3.14159・・・(円周率)

  ω=2∫(0,1)1/√(1-x^4)dx=2.62205・・・(レムニスケート周率)

  ∫(0,1)1/(1-x^4)^(1/2)dx=Γ^2(1/4)/2^(5/2)π^(1/2)

 ガウスの算術幾何平均

  M(a,b)=π/2/∫(0,π/2)dθ/(a^2cos^2θ+b^2sin^2θ)^(1/2)

より

  M(√2,1)=π/ω

また,レルヒの公式

  Δ(i)=(ω/π√2)^12=Γ^24(1/4)/2^24π^18

  E4(i)=3(ω/π)^4=3Γ^8(1/4)/64π^6

もこの兄弟分にあたる.

  Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504

に対して,第0項から始まるように,パラメータをずらすと

  Σ(n+1)^5/{exp(2π(n+1))-1}

 この級数の項比は

  an+1xn+1/anxn=(n+2)^5/(n+1)^5・{exp(2π(n+1))-1}/{exp(2π(n+2))-1}

であるから超幾何級数では表せないことがわかる.

 それではどうやってこれらの級数を証明したらいいのだろうか? 杉岡幹生氏に教えてもらったのだが,アイゼンシュタイン級数

  E6 → Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504

  E2 → Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π

  E4,ラマヌジャンのΔ → Σn^3/{exp(2πn)-1}=1/80(ω/π)^4-1/240

を用いればこれらを証明できるということであった.

 とはいえ自力では証明できなかったので,

  [参]黒川信重・栗原将人・斉藤毅「数論U,Fermatの夢と類体論」岩波書店

からの受け売りの証明を記しておく.

  Ek(-1/z)=z^kEk(z)  (双対性)

にz=iを代入すると−1/i=iになることを利用するのである.

  Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504

(証)E6(-1/z)=z^6E6(z)にz=iを代入すると,E6(i)=i^6E6(i)=−E6(i)よりE6(i)=0

  E6(i)=1−504Σσ5(n)exp(-2πn)=1−504Σn^5/{exp(2πn)-1}

  Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π

(証)E2(-1/z)=z^2E2(z)+6z/πiにz=iを代入すると,E2(i)=-E2(i)+6/πよりE2(i)=3/π

  Σσ(n)exp(-2πn)=Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π

  Σn^3/{exp(2πn)-1}=1/80(ω/π)^4-1/240

(証)レルヒの公式より,E4(i)=3(ω/π)^4

  E4(i)=1+240Σσ3(n)exp(-2πn)=1+240Σn^5/{exp(2πn)-1}

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[補]アイゼンシュタイン級数

 SL(2,Z)群上,最も単純な(基本的・古典的)保型形式は重さkのアイゼンシュタイン級数

  Ek=1/2Σ1/(mz+n)^k

    m,nは互いに素,kは整数4,6,8,・・・(4以上の偶数)

です.すなわち,アイゼンシュタイン級数は変換公式

  Ek(az+b/cz+d)=(cz+d)^kEk(z)

    c,dは互いに素,ad−bc=1

を満たすというわけです.

 保型性の定義から

  Ek(z+1)=Ek(z)

  Ek(-1/z)=z^kEk(z)

はすぐわかりますが,前者は周期性,後者は双対性と理解することができます.

  Ek(z+1)=Ek(z)    (周期性)

  Ek(-1/z)=z^kEk(z)  (双対性)

 この保型性の定義は周期性f(x+1)=f(x)を含むので,任意の保型形式はq=exp(2πiz)とするフーリエ展開をもち,

  E4(z)=1+240Σσ3(n)q^n

  E6(z)=1−504Σσ5(n)q^n

  E8(z)=1+480Σσ7(n)q^n

  E10(z)=1−264Σσ9(n)q^n

  E12(z)=1+65520/691Σσ11(n)q^n

  E14(z)=1−24Σσ13(n)q^n

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     σk(n)はnの正の約数のk乗和

 ベルヌーイ数を用いると

  Ek(z)=1−2k/BkΣσk-1(n)q^n

また,ζ(1-k)=−Bk/kにより

  Ek(z)=1−2/ζ(1-k)Σσk-1(n)q^n

とも表されます.これらはすべてのσk(n)を教えてくれる母関数であり,それが保型性を示しているという事実が,モジュラー関数は深淵といわれる所以です.

 アイゼンシュタイン級数を用いると

  Δ(z)=η(z)^24=qΠ(1-q^n)^24

     =q-24q^2+252q^3-1472q^4+5483q^5+・・・

  Δ(z)=1/1732(E4(z)^3-E6(z)^2)

と表されます.

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