■3次方程式のカルダノの解法

【1】3次方程式の解法(カルダノの方法)

 3次方程式:

  ax^3+bx^2+cx+d=0

の場合は,2次方程式のようにな完全立方式=定数の形にすることは難しそうですが,x^2の項の係数はx’=x+b/3aと変数変換(カルダノ変換)することによって簡単に消すことができます.

  ax^3+bx^2+cx+d=a{(x+b/3a)^3+p(x+b/3a)+q}

ここで,

  p=(3ac−b^2)/3a^2,

  q=(2b^3−9abc+27a^2)/27a^3,

  u=x+b/3a

とおけば,

  u^3+pu+q=0

となり,uについては2次の項がなく,3次,1次,定数項が残りますから,因数分解の公式

  a^3+b^3+c^3−3abc

 =(a+b+c)(a^2+b^2+c^2−ab−bc−ca)

 =(a+b+c)(a+bω+cω^2)(a+bω^2+cω)

が使えそうです.ここで,ωは1の3乗根:{(-1+√(-3)}/2であり,

  ω^3=1

また,

  x^3−1=(x−1)(x^2+x+1)

      =(x−1)(x−ω)(x−ω^2)

と因数分解できますから,ω^2+ω+1=0を満たしています.

  a^3+b^3+c^3−3abc=a^3−3bca+(b^3+c^3)

したがって,既知の数p,qに対して

  p=−3bc,

  q=b^3+c^3

を満たすb,cが求められれば,

  u=−(b+c),−(bω+cω^2),−(bω^2+cω)

すなわち,解

  x=−b/3a−(b+c)

  x=−b/3a−(bω+cω^2)

  x=−b/3a−(bω^2+cω)

が得られたことになります.

  b^3+c^3=q,

  b^3c^3=−p^3/27

ですから,b^3,c^3は2次方程式:

  v^2−qv−p^3/27=0

の解として定めることができます.

 このように,カルダノの方法として知られている3次方程式の根の公式では未知数を変換して2次の項をなくした方程式に変換し,最終的に2次方程式に帰着させます.本質的には,2次方程式の解法で使った正方形の分割を,そっくりそのまま立方体の分割に応用して3次方程式を解くという幾何学的アイデアに基づいています.すなわち,平方完成の原理を立体図形にまで高めたのがカルダノの方法なのです.

 実は,真の発見者はカルダノではなく,フォンタナ(通称タルタリア:タルタリアというのはどもる人という意味で彼のニックネームだった)の発見した解法であるというエピソードはいろいろな数学史の書物に取り上げられているのでご存じの方も多いと思われます.

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 ここではx^2の項の係数を0にする変数変換(カルダノ変換)によって,

  u^3+pu+q=0

の形にして,このp,qを用いた形で3次方程式の根の公式を与えましたが,2次方程式の場合と同様に「3次方程式の判別式」を使っても書くことができることを示しておきます.

 3次方程式をx^3+bx^2+cx+d=0とおいても,一般性は失われません(もし,x^3の係数がa≠1ならば,aで両辺を割ればこの形になる).この方程式の判別式は,

  D=−4c^3−27d^2+18bcd+b^2c^2−4b^3d

 また,

  B=−2b^3+9bc−27c,

  u^3={B+3√(−3D)}/2,

  v^3={B−3√(−3D)}/2

とおくと,x^3+bx^2+cx+d=0の3根は,判別式Dを使って

  x1=(−b+u+v)/3,

  x2=(−b+ω^2u+ωv)/3,

  x3=(−b+ωu+ω^2v)/3

で与えられます.

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