■代数的整数と最小拡大数体(その18)

 整数(有理数)係数の多項式で,f(α)=0となるものが存在するとき,αを代数的数,また,代数的でない実数は超越数と呼ばれる.

 代数的数は,その数を解にもつ最小次数の多項式により分類される.たとえば,

[1]有理数,整数 → 1次

[2]√2,(5−√3)/2 → 2次

[3]3√2+√3 → 6次

  [参]吉田信夫「極限的数論入門」現代数学社

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[Q]tan1°は超越数か?

 論法はいささか趣きが異なるが,数学的帰納法で証明する,tant°が整数係数の多項式ft(x),gt(x)を用いて,

  tant°=gt(tan1°)/ft(tan1°)

と表せるものとする.

  tan(t+1)°

=(tan1°+tant°)/(1−tan1°・tant°)

=(tan1°+gt(tan1°)/ft(tan1°))/(1−tan1°・gt(tan1°)/ft(tan1°))

=(tan1°ft(tan1°)+gt(tan1°))/(ft(tan1°)−tan1°gt(tan1°))

 したがって,

  ft+1(x)=ft(x)−xgt(x)

  gt+1(x)=xft(x)+gt(x)

とおくことによって

  tan(t+1)°=gt+1(tan1°)/ft+1(tan1°)

と表すことができる.

 数学的帰納法により

  tan45°=g45(tan1°)/f45(tan1°)=1

であるから,tan1°は整数係数の代数方程式

  g45(tan1°)−f45(tan1°)=0

の解となる.よって,tan1°は代数的数である.

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[雑感]

 tan30°でもtan60°でもいけない理由がおわかりいただけたであろうか.

 tan45°=1の最小多項式は1次であるから,t=1のときはf1(x)=1,g1(x)=xとすればよく,そうすれば

  ft+1(x)=ft(x)−xgt(x)

  gt+1(x)=xft(x)+gt(x)

よりf2(x)は2次,g2(x)は1次,f3(x)は2次,g3(x)は3次となる.

 したがって,

  g45(x)−f45(x)

の最小多項式は高々45次,tan1°は高々45次の代数的数である.

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