■代数的整数と最小拡大数体(その10)

【4】ワイエルシュトラスの標準形

 y=ax^3+bx^2+cx+dという方程式で定まる曲線はおなじみの3次曲線ですが,yのところがy^2に変わるとワイエルシュトラスの楕円曲線:

  y^2=ax^3+bx^2+cx+d

になります.ただし,a,b,c,dは有理数で,右辺の3次式は重根をもたないものと仮定します.楕円曲線をワイエルシュトラス形式に制限しても一般性を失いません.実際,どのような楕円曲線もワイエルシュトラス形式の楕円曲線に双有理的に同値だからです.

 また,x^2の項の係数はx’=x+b/3aと変数変換(カルダノ変換)することによって簡単に消すことができますから,

  y^2=x^3+ax+b   (4a^3+27b^2≠0)

を楕円曲線と定義しても構いません.4a^3+27b^2≠0は重根をもたないための条件です(判別式:Δ=−(4a^3+27b^2)).

 ワイエルシュトラスの標準形:

  y^2=x^3+ax+b   (2^2a^3+3^3b^2≠0)

のj-不変量を計算すると,

  j=2^8・3^3b^2/(2^2a^3+3^3b^2)

となります.jー不変量は,2つの楕円曲線が同じjー不変量をもつかどうかなど,3次曲線を分類する(見分ける)ための指標になっているのです.

 なお,jは射影変換不変量であるばかりでなく,双有理変換不変量です(サーモンの定理).

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【5】補足

[1]ワイエルシュトラスの標準形

  y^2=x(x−1)(x−λ)

はxを1次変換しyを定数倍すると

  y^2=4x^3−g2x−g3

  g2=3√4/3(λ^2−λ+1)

  g3=1/27(λ+1)(2λ^2−5λ+2)

に変形できます.

  y^2=4x^3−g2x−g3

  j=1728g2^3/(g2^3−27g3^2)

をワイエルシュトラスの標準形といいます.g2^3−27g3^2≠0は重根をもたないための条件です.

[2]ヘッセの標準形

 非特異3次曲線は9個の変曲点をもつ.そのひとつを(0,1,0)とし,そこでの接線がz=0となるように射影座標をとると,ワイエルシュトラスの標準形:

  y^2z=4x^3−g2xz^2−g3z^3

の形にできる.

 さらに,9個の変曲点が

  (−1,ω^i,0),(−1,0,ω^i),(0,−1,ω^i)

    ωは1の虚数立方根,i=0,1,2

となるような射影座標をとると,ヘッセの標準形

 x^3+y^3+z^3−3λxyz=0

に正規化することができる.

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曲線x(1-x^2)=y(y^2-x^2)の3つの実変曲点はx軸上にある。

(1,0),(0,0),(-1,0)

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