■代数的整数と最小拡大数体(その5)

 3次方程式f(x)=x^3+bx+c=0のひとつの根をαで表す.

  x^3+bx+c=(x−α)(x^2+αx+α^2+b)

より,他の2根は

  −α/2±(−(3α^2+4b)^1/2/2

となる.

 また,最小分解体は

  Q(α,β)=Q(β,γ)==Q(γ,α)=Q(α,D(f))

となり,3次方程式の構造とその最小分解体が明確に対応していることがわかる.

 ところで,j-不変量は3次曲線の構造を与えるひとつの例であり,射影変換によって互いに写り合う3次曲線は同型とみなされるのである.

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【1】群の例

 群とは集合に演算を入れたものです.6つの有理関数

  f1(x)=x,f2(x)=1−x,f3(x)=1/x,f4(x)=1/(1−x),

  f5(x)=(x−1)/x,f6(x)=x/(x−1)

を考えます(x≠0,1).2つの関数の合成,たとえば,

  f2・f3(x)=f2(f3(x))=1−1/x=(x−1)/x=f5(x)

ですから,f2・f3=f5とします.

 すると,この6つの関数は群となります.

     | f1  f2  f3  f4  f5  f6

  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  f1 | f1  f2  f3  f4  f5  f6

  f2 | f2  f1  f5  f6  f3  f4

  f3 | f3  f4  f1  f2  f6  f5

  f4 | f4  f3  f6  f5  f1  f2

  f5 | f5  f6  f2  f1  f4  f3

  f6 | f6  f5  f4  f3  f2  f1

 なお,位数がnの有限体はnが素数と素数の累乗の場合だけに限られます.すなわち,位数が2,4,8,16,32,・・・の有限体,3,9,27,81,243,・・・の有限体はあるのですが,6や15の有限体はないのです.

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【2】3次曲線の射影変換

 3次曲線は,射影変換を用いれば次のいずれかに変換されます.

  (1)y^2=x^3

  (2)y^2=x^2(x−1)

  (3)y^2=x(x−1)(x−λ)  λ≠0,1

 (1)は「く」の字型曲線で原点で尖点をもちます.(2)は「の」の字型曲線で原点を通ったところでループを描いて自分自身と交差しますから,原点が2重点となります.(3)はループと弓形曲線の2つに分離します.すなわち,(1)(2)は特異点をもち,(3)は非特異です.したがって,滑らかな非特異3次曲線は(3)の形に表せます.これらは特異点による分類といってもよいのですが,射影変換によって互いに写り合う3次曲線は同型とみなされます.

(証)3次曲線とはf(x,y)=0が2変数x,yの3次あるいは3次以下の方程式で与えられた曲線

  a1x^3+a2y^3+a3xy^2+a4x^2y+a5x^2+a6y^2+a7xy+ax8+a9y+a10=0

で,一般式の項数は10になります.

 3次以上の曲線を実数の範囲で考察するのは大変厄介であり,x,yを複素数で考察すると理論が単純化されます.そこで,変数を複素数の範囲で考えると,C上7個の関数1,f,g,f^2,fg,f^3,g^2は1次従属ですから,ある複素数の組(a0,・・・,a6)が存在して,

  a0g^2+a1f^3+a2fg+a3f^2+a4g+a5f+a6=0

を満たします.ここで,a0=1としてよく,楕円曲線はC^2上の3次曲線

  y^2+a2xy+a4y=−a1x^3−a3x2−a5x−a6

の射影化と同型です.

 これをもう少し簡単な形に変形すると

  y^2+a2xy+a4y=(y+a2x/2+a4/2)^2−a2^2x^2/4−a2a4x/2−a4^2/4

  y1=y+a2x/2+a4/2x,x1=x3√(−a1)

と1次変換すれば

  y1^2=x1^3+b1x1^2+b2x1+b3=(x1−α1)(x2−α2)(x3−α3)

 ここで,C上の2点α1,α2を0,1に変換する1次変換とy1の定数倍により,y^2=x(x−1)(x−λ)という形に変形できます.

  [参]安藤哲哉「代数曲線・代数曲面入門」数学書房

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