■五次方程式の非可解性(その4)

【3】ガロアと群

 1824年,アーベルは一般の5次方程式が四則演算とベキ根によっては解けないことを証明しましたが,まだ核心部分(ガロア理論)には到達しておりませんでした.

 n次方程式の根の置換を考えると,それはn次対称群Snの対称性を有しているのですが,ガロア理論によると,n次方程式を解くということはSnのなかに不変部分群(正規部分群)を見つけることに対応しています.

 正規部分群をもたない群は単純群と呼ばれるわけですから,単純群であるかどうかが方程式が可解か可解でないかを決定することになります.実際にはA5が最小の非可換な単純群であり,S5>A5ですから一般の5次方程式が四則演算とベキ根によっては解けないことがわかるのです.

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 歴史的にみて,群は代数方程式の解の置換の研究として誕生しました.アミダクジのように,元と元を1対1で置換する写像は群をなします.この群を対称群,その部分群を置換群と呼びます.また,偶置換全体も対称群の部分群になっていて,これを交代群と呼びます.

 群の概念を生み出したのがこの置換群なのですが,アーベルの定理(1824年)を一般化して,ガロアは代数方程式の解集合の置換群と代数方程式の可解性の密接な関係を発見しました.単純群とは自分自身と単位群だけからなる自明なものを除いて,正規部分群を含まない群をいうのですが,5次以上の交代群Anは単純群となります.そして,交代群A5は位数最小の非可解群であることが証明されています(ガロアの定理).また,それを部分群として含むSn,An(n≧5)の非可解性も証明されます.

 すなわち,5次以上の代数方程式に代数的解法がない(=方程式の係数間の加減乗除とベキ根ととるという操作によって得られない)のは,この性質の基づくことがアーベル・ガロア理論から明確になったのです.そのとき使われたアイデアが群と呼ばれる概念で,対称変換群の性質により,この難問がこともなげに解けてしまうのです.これは非常に驚くべきことであって,ガロア理論は20世紀以後の代数学の研究対象を変えてしまい,抽象代数学と呼ばれる分野が誕生したのです.

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